笠松競馬の騎手ら3億円超の所得隠しが、コロナであぶり出された裏事情

日刊SPA! / 2021年1月24日 8時29分

写真

写真はイメージ

 先日、笠松競馬の騎手・調教師ら約20名が3億円超の所得隠しをしていたというニュースが全国紙各紙で報じられた。その中でも「約2億円は馬券を買っていて所得申告していなかった」という衝撃の内容が明らかにされ、大きな波紋を呼んだ。これは、関係者が馬券を買ってはいけないという競馬法29条に違反した行為である。その理由は言わずもがな、八百長につながる可能性があるからだ。

◆なぜ申告漏れ報道が先に出たのか

 今回は名古屋国税局の税務調査によって所得隠しが発覚した。もちろんこの件で発覚した内容には経費水増しの話もあるが、なぜ税務調査が入ったのであろうか。関係者に取材をすると、事の発端は昨年6月に遡るという。

「発端は、昨年6月あった岐阜県警による騎手や調教師に対する馬券購入の疑いへの捜索ですね。当該騎手や調教師は引退しましたが、捜査は続いていましたから、芋づる式に他からも出てきたというのが実態でしょう」(地方競馬関係者)

 報道では、以前から内部情報をもとに親族に依頼して馬券を買って利益を出していたという証言もあったが、この1,2年で立て続けに発覚したのには、ある理由がある。

◆ネット投票で全ての証拠が白日の下に……

 それは笠松での引退騒動よりも前、2020年1月にボートレースで西川昌希元選手が逮捕された八百長事件である。彼もまた、親族に舟券を頼み、自らの着順を意図的に下げることで利益を得ていた。その調査で、すでに名古屋国税局はこのパターンでの調査に知見を得ていたわけだが、どうやら“脇の甘さ”が発覚を招いたと関係者たちは語る。

「こうした関係者が購入する手口は、昔は親族などに頼んで馬券やら舟券やらをレース場で買っていたと言われている。だからなかなか発覚しなかったのに、西川の関係者はネット投票で買っていたという。そんなのアシがつくに決まってるじゃないですか」(公営競技記者)

 そうなのだ。ネット投票で買ってしまっていたからこそ、登録情報や銀行と紐付いた入出金履歴でバレバレだったのである。調べれば払い戻しの10円単位まで全部わかってしまうということだ。正直、インサイダーか八百長かはともかくとして、犯罪としてのレベルは低すぎる。

 昨年6月の笠松での捜索から7か月、この期間中は、コロナによって公営競技界では無観客開催、すなわちネット投票でしか原則馬券を購入できない時期があった。実はこれが決定打になったという。

「ネットでしか馬券が買えない時期がありましたから、この時期に悪いレースをやっていたら購入額とレースの内容で状況証拠は揃いますね。もはや言い逃れはできないと思っています」(前述の公営競技記者)

 八百長疑惑はコロナによって炙り出された……。なんとも皮肉な話だろう。

◆内部情報でどこまで勝てるものなのか

 また、今回の報道では馬の体調などの内部情報で儲けていたとあったが、それはどの程度有力なのだろう。競馬予想界隈ではこんな見解もある。

「中央競馬だと完全ではないがコメントも広く伝えられ、また、近年ではパドックで脚の状態を見定める人たちが多く、表になってなくても見抜いていく人たちもおり、パドック予想は進化していますからそこまで内部情報が有効でもなくなってきています。ただ、地方ではデータベース的利用者もまだまだ少なく、パドック文化的にもそこまで至っていないところが多いので、こうした情報は有効だったのでしょう。現に利益が出ているわけですから」(競馬予想紙記者)

 結局は情報公開を進めていくことで抑止力とするほかないだろう。今後は笠松だけでなく、競馬情報の透明化や在り方も見直しが迫られる。

◆一般客にしわ寄せがくる

 この一件で、税務調査をすればインサイダー・八百長事例は炙り出せることが分かったと言っていい。今回の笠松競馬のみならず、すべての公営競技で、関係者の税務調査に準ずる調査を徹底して行うことで、全体をキレイにするほか失った信頼を取り戻す方法はないのでは。幸いにして、コロナによる無観客開催が「悪さをしていた人たち」をすべて浮き上がらせてくれているのだから。

 地方競馬においては、賞金が安く関係者も苦しい状態というのはよく聞く。コロナによって空前のネット投票バブルが起き売上が上がったのなら、こうした状況を改善してほしいのはもちろんだ。だが、信頼を回復させるために、透明性と公正さを担保できるよう改革していただきたいと切に願う。もちろん、先は明るくない。今回の一件で笠松競馬は開催を中止しているが、悪さをしていなかった関係者や馬を預けている馬主の被害額は想像を絶するものがあるし、3億円もの申告漏れが起こるほど関係者で「抜いていた」のであれば普段笠松の馬券を買っていたお客側は相対的に払い戻しを少なくされていたことになる。

 競馬が好きだから存続してほしい。私はそう思っているが、簡単にそんなことは言えない悲しい状況だ。笠松が生んだ名馬オグリキャップも泣いているのではないか……。

【佐藤永記】
公営競技ライター・生主。シグナルRightの名前で公営競技の解説配信活動「公営競技大学」を個人運営している。また、日刊SPA!のギャンブルコーナー勝SPA!編集担当も。Twitter:@signalright

―[公営競技生主・シグナルRightのひたすら解説]―

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング