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ネット上でお賽銭を募る「カミムスビ」は新手の神社ビジネスか?運営を直撃

日刊SPA! / 2021年8月1日 15時52分

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※写真はイメージです

◆「カミムスビ」とは一体どんなシステムだったのか?

 全国の神社を掲載するサイト「カミムスビ」がクレジットカードを使って好きな神社にお賽銭を納めるオンラインサービスを設けたところ、無断でお賽銭機能や境内の写真などを掲載された多くの神社が困惑し「詐欺ではないか」と取り沙汰された。サイトを運営する一般社団法人神社を守る会は、お賽銭機能を停止すると共に、謝罪の言葉を掲載し騒動は一段落している。

 問題となったお賽銭機能は、サイトに掲載されている神社にクレジットカードで任意のお賽銭を支払えば、サイト運営者が決済手数料を差し引いた金額を神社に納めるというものだった。しかし、掲載されている3万を超える神社にどのようにお賽銭を納めるのかは説明がなかった。さらに、運営をする一般社団法人神社を守る会も実態がまったく不明なことから疑惑を深めるに至ったのである。

 運営組織の実態がまったく不明なのは事実であった。この社団法人の登記簿をみると登記は昨年11月に行われたばかり。4人の理事の名前が掲載されているが、登記簿上の主たる事務所は東京都練馬区となっているのに対して、代表理事の住所は滋賀県となっている。さらに理事の名前を検索していくと、一人が「日本伝統会議」の屋号で古事記の朗読DVDなどの販売をしていたことが判明。

◆関係者はビジネスを否定

 この屋号のFacebookページを見てみると「邪馬台国と高天原が徳島にあった」などと主張する団体の催しを宣伝しているのも見つかった。これは、新手の神社を利用したビジネスを目論む集団なのか。しかし、取材に応じた同団体の関係者は、それを否定した……。取材依頼のメールを送信したのは、ちょうど騒動がネットで盛り上がり初めていた7月9日頃のこと。メールを送ると数時間後に電話が掛かってきた。

 電話の人物は同社団法人に所属する人物であるとした上で「匿名ということにしてもらいたい」と名を名乗らなかった。なんだか、妙な感じがしたが、それは承諾して話を聞くことにした。

 この人物がまず強調したのは非営利の団体であることであった。これまでサイトの運営費などは役員らが手弁当で行っていて、すべて持ち出しであるとし「決して詐欺ではない」と何度も繰り返し、あくまで神社が好きな個人が集まった団体であると説明した。電話の相手に、どういった経緯で参加しているのかを尋ねると、こう応えた。

「私自身も、神社めぐりを趣味にしていたら声をかけられたんです。自分はサイトのデザインや管理ができるので、それを担当しています。もちろん報酬はありません」

 そして、問題となったお賽銭機能については次のように語る。

「昨年11月に、神社本庁に相談にいった際にお賽銭やクラウドファンディング、オンラインのサービスに対しての神社界の見解をお伺いしました。しかし、自分たちはもともと多くの神社が収益も少なく危機的状況にあるために、なんとかしたいと考えて集まったこともあり、ひとまず始めたほうがよいのではないかと考えて今年5月にサイトをオープンしたのです」

◆神社本庁もネット参拝と賽銭は好ましくないと考えている

 後述するがオンライン参拝などネットを用いてお賽銭を納めたり祈祷を行うことは、多くの神社では容認していない。神社本庁に尋ねると、神社の総意ではないと前置きした上で好ましいことではないと答えるのは、ある程度神社に詳しい人ならば常識である。その上で、お賽銭機能を無断で実装した理由はなぜか。

「無断でやろうとは思っていませんでした。いくつかの神社には相談をしたのですが、話を聞いてくれた神社でも“反対も賛成もしない。黙認もしない”といわれました。お賽銭機能に参加したことで批判されるのが困るというのです。ならば、まずは機能を実装してみようと思ったのです」

 やらかしを反省し「神社本庁には謝罪にいく予定でアポも取ってある」と話す電話の主。最後に、理事の一人の事業について尋ねると、こう話した。

「確かに彼から、過去にそうしたビジネスを行っていたことは聞きました。でも、この団体のこととは関係ないですし、自分たちも奇妙な歴史を主張しているわけではありません」

 いくつもの取材の対応をしていたのか、疲れた声の電話の主は「事務所は個人の方に住所だけ置かして貰っていたのですが、そちらにも迷惑がかかってしまって……代表理事も東京にいるのですが住所を滋賀県のままにしていたせいで……」と語って電話を終えた。
 
◆神社好きが起こした早とちりか

 結局「詐欺ではないか」と指摘され、なにか怪しげなビジネスではないかとも想像されたが、実情は随分と違った。ようは、さほど知識はないが神社を好きな複数人が、勢いだけで根回しも不十分なままに、最初から手広く初めてしまったのが騒動の原因であろう。もしも、ある程度神社の知識があれば、オンラインでのお賽銭の代行やデーターベース化は、とても実現不可能だと容易に想像ができる。

 筆者もこれまで神社や信仰に関する文章を幾つか記しているが、時として大変な時もある。まず神社はそれぞれが独立しているので、神社本庁に入っている、いないに関わらずなにか取材する時には個別にアポを取らなくてはならない。撮影の際も写真が禁止されている範囲が神社によって異なる。

「カミムスビ」の場合、お賽銭機能以外に神社の情報をユーザーが投稿できるようになっていたが、ともすればほぼすべての神社で撮影禁止が当然のご神体の写真が投稿されることもあり得るし、由緒や行事日程なども正しいものが掲載されているかも責任が取れない(小さな神社だと、祭りの予定などは境内に掲示されているだけも当たり前である)。お賽銭機能以前に、情報を掲載された神社がカンカンになるのも当然といえる。

◆神社にとって今でも電話と郵送が基本

 そうした中で、お賽銭機能は運営団体の考えた「一刻も早く地方の神社を助けたい」という思いとは裏腹に、神社の人々の気持ちを逆なでするものとなってしまった。なぜなら、いかにネットサービスが普及して生活が便利になろうとも、オンラインで参拝、神札や御守りの購入はあり得ないというのが多くの神社の見解だからである。

 コロナ禍で密が避けられる中、神社の中にはサイト内にオンライン参拝の機能を設けたり、神札や御守りのオンライン購入を可能にしている社もある。だが多くの神社ではこれはありえない行為と捉えている。オンライン参拝の是非は2006年頃に一度大きく取りざたされたことがある。一部の神社は「手紙がネットに変わっただけ」と推奨したが、容認しない方が神社のほうが多かった。

 2006年7月には神社本庁が「インターネットに関はる尊厳性の護持について」という通知を各都道府県の神社庁に出し、インターネットを用いた参拝や祈願、神札などの頒布を「インターネットに関はる神社の尊厳性の護持上、問題となる事項」として指導を求めている。

 いまでは多くの神社が公式サイトを設けており、遠方で参拝が困難な場合の祈願の案内や神札などの授与について説明するページを設けている。それも、電話かメールで問い合わせて郵送が基本。オンラインショップよろしくネットで入力すれば完了という神社のほうが少ない。

 筆者も崇敬する熊野那智大社はなかなか参拝が困難なので神札を送って貰っているのだが、メールで問い合わせた後、振込用紙同封で郵送されてくるので郵便局で納付する形になっている(とても丁寧でのちほど葉書で入金確認のお知らせが届く)。

 本来は直接尋ねて参拝が基本。もしも、それが出来ない場合には古来から行われている神社の方角を拝む遙拝という風習がある。だから、あえてインターネットのサービスを用いる必要はどこにもないわけである。

◆「詐欺だ!」と騒ぐ前に考えてほしい

 昨年、コロナ禍での初詣を前に神社本庁でマスコミ向けのセミナーが開催された。ここで筆者は密を避けるために初詣の参拝ができないが、お賽銭を納めたい場合にはどうすればいいかと尋ねた。

 それに対して担当者が語ったのは、混雑を避けて遅い時期に参拝しても、自分が初詣だと考えれば初詣ということ。もしも、参拝が困難な場合には、次に参拝した時にまとめてお賽銭を納めてもいいし、現金書留で郵送しても構わないというものだった。

 しきたりに厳しい部分もあるが、実勢にあわせてアバウトになるのも神社の姿である。まずは日々、信仰心を持っているかが肝要なところだろう。今回のお賽銭騒動で雨後の筍のように「詐欺だ」とネットで騒いでいる人たちはどうなのだろうか、と思った。

【昼間たかし】
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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