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郷ひろみがデビュー50周年に語った仕事の流儀

日刊SPA! / 2021年8月1日 8時52分

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 1972年のデビュー以来50年、日本歌謡界のトップを彩り続ける郷ひろみ。8月4日には50周年記念ダブルA面シングル「100GO!回の確信犯/狐火」をリリースする。今も変わらぬ躍動感溢れるパフォーマンスの源は何なのか。そして郷ひろみはいかにして郷ひろみとなっていったのか。稀代のエンターテイナーの流儀に迫る。

◆新曲は納得の仕上がり

――今回の両A面シングルですが、アップテンポなナンバーとバラードという、実に郷さんらしい2曲の構成ですね。「100GO!回の確信犯」では往年のヒットソングのフレーズが散りばめられ、50年のキャリアがフラッシュバックするように感じます。郷さん自身の手応えはいかがですか?

郷 アップテンポなダンスチューンと、しっとりと歌だけで惹き込んでいくバラード。まったく世界観の異なる2曲ですが、納得の仕上がりになりましたね。「100GO!回の確信犯」では、18歳のSASUKEさんに作詞・作曲からミックスまでお願いしました。イントロから昔の音源を使ったコラージュがあり、一瞬、過去を振り返る。でも、歌に入るとじつはこれからを感じさせる。そんな僕の生き方を投影したような作品になっていると思います。

 バラードの方(「狐火」)は96歳のバート・バカラックという有名な音楽家の方のカバーで、なおかつ日本語の詞を書いたのはゲスの極み乙女の川谷絵音さん。バカラックのメロディにこの詞を載せていったというギャップを楽しんでいただけると思うし、ある程度のキャリア、年齢を重ねてきたからこそ歌える、そんな曲になっていると思います。

◆あえて気鋭の若手クリエイターの方に依頼した理由

――これまで多くの作詞家・作曲家の方々とお仕事をされてきた郷さんが、この節目の楽曲であえて気鋭の若手クリエイターの方に依頼された狙いはどのあたりにあるのでしょうか?

郷 世の中が刻一刻と移り変わっていくように、音楽というものも常に進化し続けています。僕自身、一瞬過去を振り返ることはあるかもしれないけれど、常に前を向いて歩いていきたいと思っています。だからこそ、今を時めく作家陣にお願いしたというのもあります。

 今回のプロジェクトが始まった当時、SASUKEさんはまだ17歳でしたからね。これからの音楽界を背負っていく世代ですし、そういう人に委ねたというところが、きっと面白さとして曲にも出ているのではないでしょうか。ある意味僕を感じさせない、でもよく聴いてもらうと、「ああ、確かに郷ひろみの曲だ」と感じてもらえる。そんな作品に仕上がっていると思います。

◆「やる」と言った瞬間から迷いはない

――郷さんのパフォーマンスはご自身のライブのみならず、テレビの歌番組等も含めてどんなステージでも常に“やり切っている”という印象があります。そんな郷さんであっても、やり切るのが難しくなる時、あるいは迷う瞬間というのはあるのでしょうか。

郷 新しい仕事の話が来たときに、「これはどうだろう? うまくいくかな?」と思うこともときにはありますよ。でも、迷うのは、やると決める前までですね。打合せをして、一度首を縦に振って「やる」と言ったら、その瞬間から僕の中に迷いみたいなものはもうないです。

 たとえば、もしどこかに迷いが残ったままステージに立ってしまったら、それはきっと観ている人にも伝わってしまいますよね。「大丈夫かな?」という空気が。「分かった」と言った瞬間に迷いは捨て去るので、それが残ったままステージに上がったことは一度もないですし、迷ったまま仕事を受けることもないです。

――年末の歌番組などでは、郷さんよりも50歳近く若いアイドルの方とコラボレーションされることもありますよね。郷さんほどの方であればそれを断ることもできると思うのですが、若い方とのコラボにも果敢に、しかも前向きにトライしてらっしゃるのが印象的です。ご自身の中で「これは自分の方向性とは少し違う」と感じたりすることはないのですか?

郷 多分、僕のところに話が来るまでに、スタッフの中にもいろんな葛藤があると思うんです。「これはさすがにどうだろう?」とか。でも、僕のところまで上げてきたということは、スタッフの中でのある程度の勝算があるのかなと思うので……。まあ、アテにならない勝算ですけどね(笑)。実際にどうなるかはやってみないとわからない。

 でも、僕自身がどれだけ自分を客観的に見ようとしたとしても、そんなのたかが知れていると思うんです。スタッフのみんながそれを違った角度から、僕以外の他人の目線から見て判断してくれているわけですから、ある意味彼らの目を、あるいは耳を信じようっていうのはありますよね。だからさっきお話ししたように、打合せの段階では迷うこともあります。「そのコラボはさすがにどうなんだろう?」、と……。でも「わかった、やるわ」となったときには、迷いはもうないです。

◆やり切って初めてわかること、見えることもある

――「やる」と決めた瞬間に腹を括るのですね。

郷 はい。“信じる”ということですね。僕の仕事はそこからやり切る、演じ切るということだと思うので。どんなステージでも、やると決まったら、あとはもう100%の準備をしてステージに立つ。そしてやり切るだけです。

――周りのスタッフの皆さんを心から信頼してらっしゃると。

郷 そうですね。自分が見られない部分を、客観的に別の角度から見てくれているわけですからね。例えば今回の「100GO!回の確信犯」では、ダンスの振り付けが今までとは違う人なんです。それに関しても、「どうかな?」と思ったとしても、スタッフはある考えを持っていっているんだなと思い、その意志を尊重する。そして、その振り付けの人間に、「まず一回見せてくれる?」ってお願いして。それで、この方向でやることが自分にとってプラスになるんだろうな、と感じたら、どんなに大変でも文句は言わないですよ。途中で止めるってこともない。

 僕の中で決めていることがあって、準備していく中であるところまでやり切っちゃうと、「いや、やっぱりこっちの方がいいよね」っていうのも見えてくるんです。それと同時に、それを周りに対しても言えるんです。もし中途半端にしかやれていないのに、「これは違うと思う」と言ったら、「いやいや、できないからそう言っているだけでしょ?」と言われてしまいますよね。僕はそれがすごく嫌なんです。

 全力でやってみて、「確かにできたけど、でもこっちもあるよ」って意見するべきなんじゃないかなと思うので。その方が説得力あるじゃないですか。やり切って初めてわかること、見えることもあるのに、やらないでそれを言っても多分周りも納得しないと思うんです。そこは僕の中のスタンスとしてありますね。

◆30代からは自分で掴んでいくしかない

――なるほど。キャリアのいつ頃からそう思われるようになりましたか? デビューして間もない頃と、ある程度キャリアを積んでからでは見え方や考え方も変わると思うのですが。

郷 確かに、デビューした当初からそう思えていたわけではなくて、いつの頃からか、徐々にそう思うようになっていったんでしょうね。目の前のことを闇雲に頑張る、ひたすら走り続けるという10代20代の頃があって、でもあるときから、僕の場合は30代だったと思うんですけど、「30代からはもう人が運を運んでくれないよな」、「自分で掴みに行かなきゃいけないんだな」って気付いた瞬間があって。それがわかった瞬間からもう、自分で運を掴みに行くんですよね。「もっとやらないと」って。

 まあ考えてみたら、社会と一緒ですよ。何にもわからずに就職して、20代の頃はいろんな人がいろんなことを教えてくれる。失敗しても、誰かが助けてくれる。でも、30代になったら立場が逆転していくわけじゃないですか。今度は下の世代の人たちに教えていかなきゃいけない。自分のことは自分で責任を持ってやり切るしかない。それと同じことなんですよね。誰も運を運んできてはくれないから、自分で掴んでいくしかない。多分僕もそうだったんだろうと思います。

 特に僕の場合はグループじゃなくて、デビューからずっと一人でやってきているから、上手くいかなかったときに誰かに責任転嫁するということもできなかった。失敗したらすべて自分の責任だから、その中で自然と一つ一つの仕事により責任感を持って向き合うようになっていったのかもしれません。

◆その時点での100%を尽くしてOKを出している

――だからこそ、先ほど伺ったように「一度やると決めたら腹を括ってやり切る」わけですね。

郷 そうですね。ステージに立つときも、レコーディングして音源を作っていく過程でも、自分でやり切るしかないんですよね。そうしていつの頃からか、中心に追いやられていく自分がいたわけです。

 だから今回の「100GO!回の確信犯」にしても「狐火」にしても、製品になっていく過程で、僕が全部聴いてOKを出している。「ベースの音がちょっと小さいな」とか、「ドラムの音はこうじゃないな」とか、一つ一つ細かく確認して、完璧に納得のいくものになって初めて「OK! これで行こう」となりました。

 ただそうは言ってもね、過去は秒単位で全部過去になっていくから、「やっぱりあのときこうすればよかったなあ」っていうのは絶対ありますよ(笑)。でもそれは、常に前進している自分がいる、未来に向かっている証だから。過去は過ぎ去ったものであって、先に進んでいる自分がいるのだから、当然目や耳が肥えてきて、ギャップが生まれるのは当たり前。でもそのときは、その時点での100%を尽くしてOKを出している。

◆絶対に妥協はしない

――その時点で一切の妥協はしていないわけですね。

郷 絶対に妥協はないんです。あとから「こうした方がよかった」というのはあります。でもそれは成長の証なんです、僕の考えでは。むしろ成長していなかったとしたら、感じ方が変わらないかもしれないわけです。その時々で常に自分の中で責任を負っている、ベストを尽くしているという自負はありますね。「郷ひろみはいつでもやり切っているように見える」と思っていただけているのなら、要因はきっとそこじゃないかと思います。

――私自身これまでに郷さんのライブを何度か現地で観させていただいていて、毎回のハイパフォーマンスに「郷さんはいつ見ても郷ひろみなんだ」と感じていたのですが、それもやはり一切の妥協を許さない姿勢があってこそ生まれるものなのですね。

郷 やっぱりステージというのは自分自身が一番力を発揮できる、水を得た魚(うお)のようになれる場所じゃないですか。お客さんはチケットを買って、わざわざその日にスケジュールを合わせて、時間も合わせて足を運んでくれる。その人たちのために100%の、いや100%以上のパフォーマンスを届けたい。

 だからそのためにどうすればいいかというのは、準備の段階から当日まで常に考えていますね。もちろん、100%の準備をしても完璧にいかないときもあります。でも、それだけ準備しておくと、実は及第点は絶対に取れる。100点じゃなかったとしても、97、8点は取れるんですよ。

 逆に70%しかリハーサルをせず、「こんな感じでいいかな」「あとは本番で30%」なんて思っていたら、絶対に出ない。これは僕の経験から言えます。70%の準備をしたら最高でも70点。80%だったら80点が限界。100%やって初めて、100点になるか、97点になるか、あるいはプラスアルファが出て110点が出る可能性も出てくる。でもそのプラスアルファは、100%やったからこそ出るものだと思うんです。だからリハーサルがいかに大事か、そしてそれ以前の日頃の積み重ねがいかに大事かということなんですね。

 まあそうは言っても、振り返ればムダなこともたくさんしてきているんですけどね(笑)。10代20代、あるいは30代の途中くらいまでは、今思えば「甘かったな」と思うこともたくさんありましたから。

◆遠回りした経験も、人生のプラスにできるかどうかは自分次第

――様々な経験を重ねる中で、少しずつ変わってきたと。

郷 そうですね。若い頃はうまくいかないことだって今よりたくさんありましたし、随分ムダなこともしていたでしょうね(笑)。でも、一見ムダに思える経験も、遠回りした経験も、それを自分の人生のプラスにできるかどうかは、その後の自分次第だと思うので。経験を次に活かしながら、その時その時で考えられるベストを尽くす。日々それを繰り返していくしかないんじゃないかなと思います。

撮影/嶌村吉祥丸 取材・文/福田 悠

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