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横浜カジノ白紙撤回がパチンコメーカーに与えた計り知れないダメージ

日刊SPA! / 2021年9月1日 8時29分

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◆カジノに対する横浜市民の思いが凝縮された選挙戦

 横浜市民の筆者としては8月22日に投票が行われた市長選挙は他人事ではなく、投票が締め切られる夜の8時には普段はあまり見ないテレビの前に座って速報が出るのを待機するほどでした。そして大河ドラマが始まった瞬間、まだ開票作業が行われていない段階で野党系の候補に当選確実という速報が。

 多くのメディアでこういう結果になると予想されていたとはいえ、ゼロ打ち(って呼ぶそうですね)が出るほど圧倒的な差があったということなんでしょう。選挙における争点はいくつかありましたが、やはり横浜市民の関心はIR(カジノを含む統合型リゾート、以下カジノ)にあったのは間違いと思います。

 思えば前回の選挙でカジノ誘致は白紙として当選していた前市長が、2年前、突然に推進を表明してからの反対運動は、いつもはどこか醒めた感じの横浜市民らしからぬものだったというのが筆者の素直な印象でした。カジノ反対へ向けての住民投票を求める署名活動はいろいろな駅前で行われており、いつもなら関心なさげに通り過ぎる人々が署名に協力していた姿は、長年横浜に住んでいる身としても珍しいと感じたものです。

 そして必要な署名が集まったものの、市長や市議会与党は無碍なく却下。この時点で今回の選挙結果の方向性は決まっていたのではないでしょうか。IR推進派の首相が応援した最有力候補でさえカジノ誘致凍結を公約にしていましたが、前市長の動きを知っていれば誰も信じないですし、他の有力とされる候補も軒並みIR反対を公約に。これには票の分散を狙ったという意図があるんじゃないかとさえ勘ぐってしまいましたが、もう騙されないぞという横浜市民の強い意志を感じました。

◆カジノは魅力的だが日本のカジノは……!?

 個人的にはカジノは楽しいしバカラは面白いしで、コロナ禍以前は年イチペースでマカオ旅行というのを十年来続けております。またマカオがあれほどの発展を続けているのもカジノがあってこそであり、日本のカジノ解禁について(色々な汚職をクリアにすることが大前提ですけど)異論をはさもうとは思いません。

 ただ現在の日本におけるカジノの方向性を客側の立場で考えると、あまり魅力的ではないなというのが正直な感想。マカオが楽しいのは狭いエリアに複数なカジノが密集しているからであり、ここでダメなら別の店へというパチンコ的な動きができるから。またカジノによって客層も違って、大型高級ホテル内のカジノにはテーブルゲーム(ちょっとミニマムベットが高くて、財布に余裕がないと勝負しにくいですが)だけではなくマシンが充実していたり、逆に比較的安いホテルのカジノは地元民が多い庶民的な雰囲気が良かったりと、カジノを選ぶ楽しさもあったりします。

 でも日本のカジノは現時点で最大3箇所で、各地方にポツンとあるだけという形になりそう。誘致を表明しているなかで有力視されていたのは横浜、大阪、和歌山(他に東京、愛知、長崎などに動きも。北海道や千葉も誘致を表明していたが、後に見送りを発表)の3箇所ですが、今回の市長選挙の結果で横浜は正式に撤退することになりました。となると関西の2府県だけで、仮に東京からカジノへ遊びに行こうとなったら、多少移動に時間はかかってもマカオに行く方がいいやとなりましすし、移動時間や交通費を考えたら韓国カジノだって選択肢に入りますから。

◆横浜カジノ撤退はパチンコ業界にも影響!?

 この横浜のカジノ誘致撤回は、パチンコ業界的にも無縁ではありません。いろいろなメーカーやホール企業がカジノ事業を虎視眈々と狙い、実際に海外でカジノの運営に直接的にも間接的にも関わっていますから。なかでもパチンコ・パチスロなど遊技機の大手メーカーであるサミー(セガサミー)は、日本のカジノ事業に最も積極的に動いていて、昨年には横浜カジノへの参入を正式に表明していました。

 以前から、おそらく日本でのカジノ解禁のきっかけであろう2002年のいわゆる都庁カジノ以降、宮崎のリゾート施設をグループ化したり韓国では現地のカジノ企業と合弁でカジノを運営もしています。リゾート施設ではホテルなどの運営面のノウハウを、また韓国カジノには多数の社員(パチンコ・パチスロの営業マンだった人間なども)を送り込み、カジノ施設のノウハウを積み重ねているようです。

 さらに最近では本拠地があるプロスポーツのスポンサーになったり、カジノが予定されている近隣地区で文化施設を運営したりと、横浜市民へのアピールも欠かしていませんでした。昨年、横浜市が発表した事業者からの提案概要では「映画で見たような憧れの舞台で、ラグジュアリーな非日常の世界に浸りきる本物の大人のエンターテンメント」を提供するとしており、すばらしいイメージ図も公開されています。

 本来ならセガサミー単独で運営したかったと思いますが、昨今の遊技機不況からか海外のカジノ運営企業との協業でという形になっても横浜カジノは会社としての悲願であったはずです。仮に横浜市長選挙の結果でカジノ推進ということになっていれば、2020年代後半には「本物の大人のエンターテインメント」施設ができていたのかもしれません。

◆計り知れないダメージの大きさ

 しかし選挙の結果、横浜カジノは全くの白紙に。それどころか次の市長がどうなるか分かりませんが、少なくとも市民の意識が根底からひっくり返らなければ横浜にカジノができることはなさそうな状況に。とりあえず最初は3箇所といわれている日本のカジノ、大阪と和歌山は当確というのが大方の予想であり、となるとまだひとつ枠があるだけに、そこにセガサミーが食い込むことだってあるでしょう。

 でもここまで準備をしてきた横浜カジノ、しかも複数の事業者が名乗りを上げる中でセガサミーが本命だといわれていただけに、そのダメージは大きいのではないかと思われます。
 
 コロナ禍で海外の実績ある大手カジノ企業が続々と撤退を表明した日本のカジノ。推進法、実施法と段階を踏みながら実現へと進んではいますが、その歩みは想像以上に遅々としたもの。実現するまでには超えなければならないハードルもまだいろいろとあるようで、今回のようなどんでん返しが他ではないともいえません。

 推進法成立を受けて色々なところがビジネスチャンスとばかりに動き出していましたが、それもどうなるのか。パチンコやパチスロにおける駄文を生業としている筆者も、カジノで仕事の幅が広がるなんて喜んでいましたが、もしかしたらそれがぬか喜びで終わってしまうかも。それはそれで仕方ないとはいえ、先行投資とばかりにマカオで散在した負け分は戻ってこないんですよね。

文/キム・ラモーン

【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。

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