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「スマホで撮れば盗撮じゃない」盗撮犯のあきれた妄想を、専門家が解説する

日刊SPA! / 2021年9月8日 15時54分

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写真はイメージです

 卑劣で巧妙な性犯罪である盗撮。スマートフォンや安価な小型カメラの普及もあってか、検挙される件数はここ10年で倍増している(※)。その手口はますます巧妙化しているという。被害者のダメージはもちろん、自分も逮捕されれば大きなものを失うにもかかわらず、なぜ彼らは盗撮を続けるのだろうか。

 これまで2000人以上の性犯罪加害者の治療に携わった精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏(大船榎本クリニック)は、近著『盗撮をやめられない男たち』で盗撮の実態を明らかにした。榎本クリニックで治療する盗撮加害者521人の調査も行っている。加害者はなぜ盗撮に走り、やめられないのか。そのワケを『盗撮をやめられない男たち』より抜粋、構成した。

※盗撮事犯の検挙件数  2010年:1741件→2019年:3953件(警察庁生活安全局調べ)

◆盗撮犯の多くが抱える「認知の歪み」

 盗撮行為がエスカレートしていく理由のひとつに、「認知の歪み」が挙げられます。これは盗撮だけでなく、痴漢、窃盗症など依存症者に共通していえることです。私は「認知の歪み」を「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」と定義しています。

 彼らは、口では「もうこういうことはやめたい」と言います。問題行動をやめたいし、罪の意識を心の中では感じているのです。しかし一方で「問題行動を続けたい」とも考えています。

 そこで、こういった問題行動をやめられない罪悪感から一時的に目をそらせるために、自己正当化する理論を洗練させていった結果、本人にとって都合のいい 「認知の枠組み」を作りだしていくのです。

◆根底にある女性蔑視と男尊女卑

 この「認知の歪み」は日本の社会状況のもとで学習したものです。偏った思考の根底には、女性蔑視や男尊女卑の価値観があり、この価値観自体をアップデートしない限り保存されたままで、女性をモノとして見る認知は変わらないでしょう。

 このように、加害者と社会は互いに補い合う関係にあります。当事者が語る認知の歪みには一定のパターンがあり、不思議なことにどれも似通っています。そして根底には、前述した女性をモノ化する価値観や、「NO MEANS YES(嫌よ嫌よも好きのうち)」といった価値観が存在します。

◆自分に都合がいいものだけを取捨選択する

 加害者は、その行為を正当化するために「暗黙理論」というものを持っています。これは、社会にある情報から自分に都合のいいものだけを取捨選択し、その考えをさらに強化していくことです。

 例えば、インターネットである商品をネット通販で購入すると、AIがユーザーに興味・関心のありそうな広告を自動的に画面上に表示します。SNSにしても、友人やフォロワーには必然的にそのユーザーの意見に賛同する人、拍手をする人が集まりやすくなります。

◆自分を正当化するために物語を作り上げる

 実は、性犯罪加害者もそうやって作り上げた物語の中を生きています。痴漢は、「電車内には、痴漢をOKしてくれる“痴漢OK子ちゃん”がいる」といった類いの情報ばかりに無意識にアクセスしているのです。同様に、盗撮加害者は「盗撮されたい女性もいる」というフィクションに執着します。ネット上で目にするこうした男性たちのコメントは、「性被害に遭うことを望んでいる被害者がいる」と本気で信じ込んでいるようです。

◆「認知の歪み」の唖然とする中身

ここからは、実際に盗撮加害者521人からヒアリングした「認知の歪み」の実例を挙げ、解説していきたいと思います。

(1)相手に気づかれていなければ、相手を傷つけないしOKだ。
(2)あれだけネットで盗撮画像が出回っているということは、それだけ簡単に盗撮できるということだ。
(3)痴漢行為と比べて、相手に触れないからそれほど大したことではない。

 盗撮は相手に触れない「非接触型」の性犯罪です。そのため直接相手に触れる痴漢と比べることによって、自分の問題行動を矮小化します。このパターンの認知の歪みに陥る盗撮加害者はもっとも多いといえます。加害者は盗撮によって被害者が何を奪われるかをまったく想像できず、自分のやっていることはそれほどひどいことではないと本気で思い込みながら、盗撮行為を繰り返すのです。

◆スカートをはいているから盗撮OKという呆れた言い分

(4)スカートをはいているということは、盗撮されてもOKということだ。
(5)下着が見えそうな服装の人は、心の中では盗撮されたいと思っている。

「スカートをはいていたから」「露出の多い格好をしていたから」など、相手の服装に落ち度があるという理由を挙げるのも認知の歪みの特徴です。被害者はたまたまその服やスカートをはいていただけ、駅構内を歩いていただけ、エスカレーターや階段を使っていただけです。まったく何の落ち度もありません。しかし、彼らの歪んだ認知の世界では、このたまたま居合わせた偶然が「盗撮をしていい理由」になります。盗撮加害者が見ている世界と被害者が生きる現実は、まったく別ものなのです。

◆「盗撮されたがっている女性」という妄想

 こういった認知の歪みによって、「自分は悪くない」(誘ったのは相手だから)とばかりに自分の加害行為を免責しています。彼らは、明らかにバレるだろうという場所や手口でも、盗撮するのに何の迷いもありません。

(6)こちらをチラチラ見ている女性は、もしかしたら私に盗撮されたいと思っているのではないか。
(7)和式のトイレを選んでいるということは盗撮されたい人に違いない。
(8)相手からわざわざ近づいてきたのだから盗撮してもいいだろう。

 また、6のように「相手がきっかけを作った」「相手から誘ってきた」などと自分の都合のいい解釈をする認知の歪みは、盗撮加害者だけでなく痴漢やレイプ犯、小児性犯罪者にも見られます。

◆盗撮は「相手に受け入れられている」と思い込む

 逮捕を恐れながらも、相手に受け入れてもらっているという矛盾した認識を抱えた彼らは、周囲をまったく客観的に見ることができていないのです。これは、痴漢行為でもしばしば見られる傾向です。

(9)有意義なマスターベーションをするために盗撮することは仕方ない。

 この認知の歪みは、特に盗撮を始めた初期にとらわれやすい思考パターンです。自己使用目的(マスターべーション目的)で始めた人も、次第に「盗撮のための盗撮」に移行していくのが、常習化する盗撮加害者の典型的なパターンです。

◆スマホで撮るのは盗撮ではないという理屈

 駅構内に貼ってある「痴漢は犯罪です!」というポスターを見て、「俺がやっている行為は、すれ違いざまにわからないように触るだけだから犯罪ではない」と考え、「スマホで撮るのは盗撮ではない」と言わんばかりの言い分です。

(10)(「盗撮は犯罪」というポスターを見て)俺のやっているのはスマホで撮るだけで、デジカメや小型カメラを使うわけではないから犯罪ではない。

 本当に都合のいい捉え方ですが、悲しいかな、これが彼らの目に映る現実なのです。また、この認知の歪みは、痴漢加害者にも見られるものでした。

ほかにも、「のぞかれやすい建物にした建築士のほうが悪い」というのもありました。 加害者臨床の現場に長年関わっている専門家の私ですら、このような認知の歪みに唖然とすることがあります。

◆盗撮脳、痴漢脳になる加害者たち

 これを読んでいるみなさんが嫌悪感を抱くのも当然のことです。 いずれも彼らの思考には、被害者の存在が完全に抜け落ちていますし、この歪んだ認知は、問題行動を繰り返し成功するほど強化されていきます。まるで鍋の底にこびりついた焦げのように、ちょっとやそっとでは落ちないほど強固なものになっていきます。 これは私が作った造語ですが、盗撮加害者は盗撮を繰り返すうちにやがて「盗撮脳」に、痴漢加害者は痴漢を繰り返していくうちに「痴漢脳」になっていくのです。

<斉藤章佳  構成/SPA!編集部>

【斉藤章佳】
精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などの依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数

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