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借金500万円男。金もないのにボートレースでさらにスッカラカンになる

日刊SPA! / 2021年10月24日 15時53分

写真

ボートレース平和島 写真/SPA!編集部

―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は64回目を迎えました。

 今回はボートレースでスッカラカンになったお話です。

◆「教養とは何か」をスマホゲームで知る

「教養」とはつまるところ「自分ひとりでも時間がつぶせる」ということだ。

 中島らもという作家の言葉だが、これは僕の好きな言葉のうちの一つである。

 Youtubeで世界の巨大生物ランキングや最強の兵器ランキングのような動画を見ながら

「こうして時間をつぶせている自分には教養があるのかもしれない」

 と呆けた顔で考えている。

 いや、考えてすらいない。

 そのとき、無為に捨てた時間を思い返す時の逃げ口上として言い聞かせている。実際のところは他人の作ったものを面白がって見ているだけなので全く当てはまってはいないのだが、言葉も時代と共に変化していくものだと言うし、令和の時代はこの解釈でも許されるだろう。

 教養のある僕は、Youtubeとスマホのパズルゲームを駆使して時間をつぶしにつぶしていた。誰かが生きたかった明日も、誰かが何かの決意をした朝も、僕はYoutubeとスマホのパズルゲームをしていた。

 スマホのパズルゲームは自分のフレンドがクリアしたステージの進捗状況も確認できる仕様で、始めたばかりの頃はみんな足並みを揃えていたのだが、最近はあまり進んでいないようだった。ステージ400くらいで止まっているフレンドが多い。僕は次でステージ1600だ。これも教養の為せる技だろう。

◆友人からボートレースの誘い

「5000円あげるんでボートレース行きませんか?」

 と知人から連絡があった。彼とはかつてギャンブルに燃えていた頃に知り合った。

 シケモクになってしまった僕に火をつけたいのか、教養がないから一人ではいられないのかはわからなかったが、「5000円くれるなら」とそれに応じる。

 場所は平和島で、新しい家からは2時間近くかかったが、電車の中の孤独も持ち前の教養で乗り切ることができる。この2時間の間に、僕は新たに猛毒を持つ生物についての教養を得た。

 平和島は本当に平和な場所で、レース場の近くにはパチンコ屋とショッピングモールがある。サイゼリヤや牛丼屋が多いのは負けてしまった人間への心遣いだろう。

 集合場所に着くと、もう一人知人がいた。以前一緒にご飯を食べたことがある。純粋に人と見るボートレースが面白いから集まったのか。どうやら僕は「つぶす時間」と「つぶせない時間」の二つしかないと思い込んでいただけだったようだ。

「久しぶりですね、これ」

 5000円が手渡される。

「うむ」

 人から博打代を受け取る時の様子を忘れてしまった僕は、恥ずかしさも相まって変な返事をした。

◆5000円あれば戦える……はず

 久しぶりのレース場は喫煙スペースがほとんど排除されていた。ここ2年ほどでパチンコ屋も公営ギャンブル場も随分と様変わりした。タバコを美味いと感じたことはあまり無いが、金を賭けている時の口寂しさは確かにあった。

 到着した時点で平和島は5Rを迎えていた。一日12Rまであるので残り8レース戦える。

 ボートレースは合計6艇で買い目が少ないので100円からでも楽しめる。5000円は十分遊べる金額だ。

 着いて早々、喫煙所を探しながらモニターのオッズ表を見つつ、麦茶を買った。自分が買える最初のレースはどれだけ情報不足だろうと買いたい。これでようやく平和島競艇場に「入場」したことになる。

 タバコを吸い、いそいそとレースを見に行く。無難な買い方をしたが、外れた。最初のターンでほとんど結果が決まるので、自分の予想した番号の艇が前に出なかったのを確認したら、すぐに次のレースの情報を見る。40分に1レースのスピードで進むから忙しい。

 レース自体は3分もかからないからゴールの瞬間まで待てばいいのに、残りの2分ですら次の予想に使いたくなる。どうせ大した予想も出来ず、何ならタバコも吸いに行くのだが、神妙な面持ちで予想新聞を睨みつける。

 ここから3レース、僕は立て続けに外した。久しぶりのボートだから運も溜まっているだろうと思っていたが、1着2着が当たるのに3着目が決まらない。そこで

「3着目の分の金をケチったからダメだったのか」

 と3着目を全通り買ってみると、今度は1着目を外す。これがボートレースの恐ろしい部分だ。どんな負け方をしても「惜しかった」と思わせる。競馬と違って6艇のうち3艇の組み合わせを当てるだけなので、当たろうが外そうが予想と結果の雰囲気が似ることは多い。

「レース展開は予想通りなのにあと少しのところで外してしまう。ツイてないな」

 僕は2人にこう言ったのだが、思い返すほどに恥ずかしい。6艇しかないから予想と結果は近くなる事がほとんどであるにも関わらず、僕の言い訳は達人の間合いで負けたかのような言い草だった。何なら達人のような顔をしていた気もする。

◆4レースを目前に種銭が切れる

 4レース目は買わなかった。5000円が無くなったからだ。「ボートレースで遊ぶ」という目的を考えれば、1レースあたりの賭け金をいくらにすればいいのかなんて簡単に逆算できる。そんな簡単なことを、いつも負けてから思い出す。

「ここまでの負けを噛み締めるために牛丼を食べる」

 と伝え、場内の吉野家で黙々と牛丼をかき込む。運命を呪い、味がしない牛丼を七味唐辛子で覆った。帰ってしまえばよかったのだが、入場料の100円が癪に触る。

 100円の価値を守るため、僕は財布から虎の子の5000円を取り出した。こうなるのはわかっていたので家にキャッシュカードを全て置いてきた。

 すぐに僕を裏切る自分に対しては、手を先に打っておくべきなのだ。

◆さっきまでの自分は牛丼と一緒に飲み込んでいた

 残り4レース。ここに「5000円の配分を決めるべきだ」というさっきの僕はいない。正論は牛丼と共に流し込んでしまったらしい。

 1-3-2に3000円賭けた。

 結果は1-2-3。大人しくこっちも買っておけばよかった。思い切りも意外性も全て裏目に出てしまう。

 競馬なんかはこうなるとお手上げだが、ボートはまだ天命に任せる方法がある。

 サイコロアプリをダウンロードし、連れの2人に押させた。競艇の3連単は全部で120通り。6艇なのはこのためだ。こうして不毛な甘デジが始まる。

◆財布をひっくり返して出てきた400円を……

 お座り一発、とはならず、僕はめでたく財布の金も使い切った。まだ1レース残っていたので、小銭入れをひっくり返して落ちてきた400円を一度にサイコロに委ねたが、ここで当たるような運ならばもっと早く陽の目を見ているはずだ。投げやりな顔に微笑む神はいない。神は平等で忙しい。

 ボートレースの結果は大抵レースが始まってすぐに決まる。その瞬間に立ち上がる者は負け、身を乗り出す者は配当金の計算を始めている。

 この日僕は、全てのレースでゴールの瞬間を見逃した。

 同伴した2人はどちらも勝っていたので、帰り道にうどんを奢ってもらった。この奢られについては当然なので全く恥ずかしいと思わなかった。

文/犬

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
Twitter→@slave_of_girls
note→ギャンブル依存症
Youtube→賭博狂の詩

―[負け犬の遠吠え]―

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