「メジャーリーガーにしか見られない景色がある」マック鈴木が振り返るアメリカでの日々
日刊SPA! / 2024年4月5日 15時52分
「開幕戦で、あの伝統ある球場に立つことができる。絶対にこのチャンスは逃せない。そんな思いでリハビリに励みました。すでに一度経験しているから、どの程度までやっていいのか、やれるのかを理解していたことも大きかったですね」
残念ながら敵地の開幕戦での登板はならなかったが、続く本拠地開幕戦を託されたマックは、ミネソタ・ツインズを相手に勝利を飾る。
個人的には幸先のいいスタートを切った。しかし、チーム状態は悪く、シーズン序盤で恩師・ストロームコーチが解任されると、マックの運命にも暗雲が立ち込める。
「ストロームがクビになった翌日、先発からクローザーに任命されました。初回の防御率が高かったからです。でも、僕の場合は『6回3失点』を基準にしていたから、初回に2点取られてもいいや、という思いで投げていたので結果がよかっただけ。案の定、クローザーで結果を残すことはできなかったですね……」
◆白球を求める流転の日々
そして、6月にコロラド・ロッキーズ、7月にはミルウォーキー・ブルワーズに移籍する。
「このとき、僕の精神力がもっとしっかりしていれば、誰に何を言われてもブレずにいられたと思います。でも、そこでフラフラしてしまう自分がいた。その結果、投げ方までおかしくなってしまいました」
翌’02年は古巣のロイヤルズに復帰したものの、’00年の輝きを取り戻すことはできなかった。結局、この年限りでマックはアメリカ生活に終止符を打つ。その後は’02年オフのオリックス・ブルーウェーブへのドラフト入団から始まり、メキシコ、台湾、ドミニカと、白球を求める流転の日々を過ごすことになる。
「16歳でアメリカに渡って、野球でお金を稼いで生活してきたけど、普通に日本の学校を出て、NPBでプレーしてからメジャー入りしたほうが無駄もなくてずっといい。僕の場合はたまたま運がよかったけど、この生き方は勧められない」
◆「メジャーリーガーにしか見られない景色がある」
もちろん、自分の選択に後悔はない。マックは言う。
「NPBを経験せずに初めてメジャーリーガーとなったこと。日本人で初めてアメリカンリーグで投げたこと。野球が続く限り、この『初めて』はずっと記録に残ります。引退後に結婚して、息子が生まれてから、それは誇りに思っています」
雑用係だった16歳から始まり、異国の地で孤軍奮闘して摑んだ16勝。その輝きは今なお決して色あせない。
「メジャーリーガーにしか見られない景色がある。それは本当にいい光景でした」
もうすぐ50代を迎えるマックは清々しい表情で言った。
【マック鈴木】
1975年、兵庫県生まれ。1992年に渡米、1Aサリナスで球団職員。1993年9月、マリナーズと契約。1996年、メジャー初登板。1999年、ロイヤルズ、’01年途中、ロッキーズ→ブルワーズ→ロイヤルズ。
’02年、オリックスにドラフトで入団
撮影/ヤナガワゴーッ! 写真/時事通信社
【長谷川晶一】
1970年、東京都生まれ。出版社勤務を経てノンフィクションライターに。著書に『詰むや、詰まざるや〜森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)など多数
―[サムライの言球]―
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