世界有数の“熊被害大国”日本が抱える特殊な事情。駆除せず山に返した熊は「すぐに人里に戻ってくる」
日刊SPA! / 2024年4月16日 8時52分
北海道での熊害は、環境省に正式に記録が残る1962年以降だけでも発生件数155件、死者59人、負傷者118人に及ぶ。文献に記された明治時代からの記録を含めれば、死亡数は優に100人を超える。
なぜこれほどの熊害が発生するのか。北海道というと、「広い大地」を思い浮かべるだろう。しかし、その北海道ですら、熊の生息数、土地の広さと人口数の比率で計れば、他国を大きく上回る「熊密集地帯」となっている。
人口密度の高い地域と熊の生息域が日本ほど近い環境は、世界を見渡しても他に例がない。そのため、熊が餌にしているドングリなどの木の実が不作になり、食糧確保のために活動範囲を広げれば、熊はすぐに山を降りて人里までやってくることになる。
それでも、かつては人里と熊の生息域の間には、薪や山菜を採るため適度に手入れされた里山があり、これが熊と人間の生活圏の間のワンクッションになっていた。それが現代は里山の開発が進んで人間が山際にまで住むようになった。
あるいは逆に、放置された里山が雑木林と化して熊の生息域になったことで、さらに人間と熊の生活圏は近づいている。環境省の試算では、放置された里山は日本の国土の2割強に及ぶという。
◆これまでの熊対策が意味をなさなくなる?
かつては狩猟や炭づくりのために山間に住む人々がおり、これを熊が恐れて山から降りてこないことがあったが、高齢化の影響などから山間で生活する人が減ってしまった。
そうして熊が山から降りやすくなったのと同時に、人間のほうも山登りや渓流釣りなど、レジャー目的で山に入ることが増え、人間と熊の生活圏が熊の遭遇する機会は増えていった。
環境省の調査によれば、現在、日常的に人間が居住する住宅地や市街地や農地で起きる熊害の発生率は、すでに山林での熊害を上回っているという。熊と突然遭遇し襲われるケースの多くは、これまで山間部にかぎられていた。だが今後は人間の生活圏でも熊との遭遇が増えると予測される。
やっかいなのは人里近くに生息する熊たちが、大きな物音や人間そのものを恐れなくなることだ。本来、熊は警戒心が強く、熊鈴などの音を鳴らせば接触を避けられた。しかし、人間の居住区と熊の生息域が隣接する日本の特殊事情によって、これまでの熊対策が意味をなさなくなる可能性が高いのだ。
◆過去の常識が通用しない“モンスターベア”が誕生
2009年9月、初心者向けの登山コースとして普段から多くの人出がある乗鞍岳(岐阜と長野の県境)にツキノワグマが現れ、次々と観光客を襲う事件が起きた。山の中腹からバスターミナルを目がけて駆け降りてきた熊は、まったく人間を恐れるそぶりを見せず、車のクラクションを鳴らし続けてもいっさい怯まない。
この記事に関連するニュース
-
親離れしたクマが歩き回る6〜7月、遭遇したら「ゆっくり後ずさり」…対策は「隠れ場所のヤブを刈る」
読売新聞 / 2024年7月4日 14時8分
-
死んだと思ったヒグマに頭を噛まれて頭蓋骨骨折…増え続けるヒグマと命がけで対峙するハンターが見た“危機”と“異変”
文春オンライン / 2024年7月4日 11時0分
-
銃弾一発ではカタがつかない現実。熊の恐ろしさを学べる狩猟FPS『theHunter: Call of the Wild』がセール中
Game*Spark / 2024年7月2日 12時0分
-
「覚えている」熊の目撃相次ぐ理由…食べ物の場所を記憶か 福島
福島中央テレビニュース / 2024年7月1日 18時40分
-
「ヒグマと鉢合わせたら…」「ツキノワグマの方が断然怖い」多数のクマと遭遇したカメラマンが語る“対処法”と“適正な距離”
文春オンライン / 2024年6月30日 11時0分
ランキング
-
1NYで人脈構築の小室圭さん、対照的な生活の眞子さんは「ほとんど外出せず」紀子さまが抱える“複数”の不安
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 7時0分
-
2実刑判決で「頭が真っ白に」 法廷に両親の涙 静岡バス置き去り死
毎日新聞 / 2024年7月4日 20時58分
-
3「紅麹」サプリ問題、調査中の死亡事例81人に…先月末から5人増
読売新聞 / 2024年7月4日 20時59分
-
4新潟上越市でマンホール点検中の男性死亡 夕方になっても帰社せず捜索、マンホール内で意識不明の状態で発見
新潟日報 / 2024年7月4日 23時40分
-
5「魚民」の大量閉店は“大正解”か。運営企業「モンテローザ」の“稼ぐ力”は他社を圧倒
日刊SPA! / 2024年7月4日 8時53分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)