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朝ドラ『虎に翼』早くも好調の理由に迫る。“男女差別史”のみを描いた物語ではない

日刊SPA! / 2024年4月23日 8時50分

 すると、その場にいた、よねの勤務先「カフェー燈台」のオーナー・増野(平山祐介)が、2度にわたって「オレ、外そうか?」と声を上げた。しかし、やはり同級生の大場梅子(平岩紙)が「お気になさらず」と引き留めた。2度目の口調はかなり強かった。

 増野は気を使って外そうとしたのかも知れないが、それは社会で共生する者の傷みを知ることから逃げることにもなる。生理に限らず、共に生きる者の傷みから目を背けたら、平等や多様化なんて実現しない。

 逆に、同級生たちは自らの傷みをお互いに明かした。よねは貧農の生まれで、売られそうになったため、今は働きながら学んでいる。涼子は華族であるために努力を認めてもらえないのが悔しい。梅子は姑の小言にうんざりしている。朝鮮からの留学生・崔香淑(ハ・ヨンス)は慣れぬ日本語を笑われるのが辛い。相手を理解することは平等と多様化に向けた第一歩。同級生たちの結束も固くなった。

◆36歳の脚本家・吉田恵里香とは?

 脚本を執筆している吉田恵里香氏(36)は2年前、岸井ゆきの(32)と高橋一生(43)がダブル主演したNHK『恋せぬふたり』(2022年)で、脚本界の直木賞である向田邦子賞を得た。34歳での受賞は史上最年少だった。

 この作品は性的マイノリティ(恋愛感情も性的欲求も持たないアロマンティック・アセクシュアル)の男女を描いたもの。取材を徹底的にしたあとに書かれ、マイノリティ差別の深層にも果敢に踏み込んだ。

『虎に翼』も事前に周到な取材がしてあるというから、歴史や事実関係が歪曲されることはないはず。ちなみに36歳での朝ドラ執筆もこの10年で最も若い。次代のドラマ界の中心になると言われている人である。

 第14回で学長が法廷劇の脚本を事実と変えたことが分かった直後、尾野真千子(42)のナレーションが入った。吉田氏らしい言葉だった。

「私たちは、いつの時代も、こんなふうに都合よく使われることがある」

「私たち」とは女性のみならず、全ての弱者やマイノリティを指すのではないか。過去形の話にしていないところが胸を刺す。

 寅子のモデルである故・三淵嘉子さんは「女性であるという自覚より人間であるという自覚の下に生きてきた」との言葉を残した。

 吉田氏は三淵さんに関する資料を読み尽くし、咀嚼しているようで、寅子も第10回で法の役割について、「弱い人を守るもの」と明言した。法が守るべき対象を女性に限定しなかった。やはり単に男女平等を描く物語ではない。

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