日本人選手のアメリカでのイメージを刷新した大谷翔平の「圧倒的なパワー」
日刊SPA! / 2024年4月28日 8時51分
2023年のMLBで最長飛距離となる493フィート(約150m)のホームランを放った大谷 (MLB公式サイトより)
メジャーリーグ、ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平の連日の活躍が日本人を喜ばせている。MLBを観察し、取材してきたライターの内野宗治氏はその圧倒的な力でさまざまな障壁や閉塞した世界を変えた「ゲームチェンジャー」だと評する。そんな大谷の最大の魅力は圧倒的までの「パワー」だとする。「好打者で守備がうまい、だが非力」という日本人選手のアメリカでのイメージを一変させたのだ
※本稿は、内野宗治著『大谷翔平の社会学』(扶桑社新書)の一部を抜粋、再編集したものです。
◆2021年MVPの大谷翔平と2001年MVPイチローの違い
大谷が野球選手として備える最大の特徴は、その圧倒的なまでの「パワー」だ。
まず打者として、2023年のMLBで最長飛距離ホームランを記録したほどの、打球を果てしなく遠くへ飛ばす力。そして投手として、試合後半になっても時速100マイル(約161㎞)を超える剛速球を投げ込む馬力とスタミナ。長らく日本野球の代名詞だった「スモールベースボール」ではなく、大谷はあくまで「パワー」でMLBの頂点に君臨している。そうした事実に僕ら日本人は興奮し、アメリカの野球ファンも驚いている。大谷が打者として46本塁打、投手として9勝の活躍で自身初のMVPを受賞したのが2021年。その20年前、2001年にイチローが日本人選手として初めてMVPを獲得した。
イチローは野球において考え得る限りのプレーを超ハイレベルにこなす万能選手だったが、唯一欠けていたのが「パワー」だった。バットコントロールは抜群にいい、足も抜群に速い、肩も抜群に強い、守備も抜群に上手い、でも長打力がない。それがイチローという選手のイメージであり、実際にそうだった。それは数字を見れば一目瞭然だ。MLB通算19年間で3089安打を放ったが、本塁打はわずか117本。大谷が2021年から2023年にかけての3年間で放った124本よりも少ない。イチローがシーズン10本以上の本塁打は放ったのはたったの3度だ。
◆パワー不足を批判されたイチロー
イチローの魅力は言うまでもなく、長打力よりもシュアな打撃、そしてスピードと華麗な外野守備だったが、多少粗削りでも長打力がもてはやされる21世紀のMLBにおいて、イチローのパワー不足は批判されることが少なくなかった。
10年連続200安打は確かにすごい記録だが、その多くは足で稼いだ内野安打で、一発で試合を決めるような長打はほとんどないじゃないか、と。試合では長打の少なかったイチローが、試合前の打撃練習ではサク越えを連発していたのは有名な話だ。現役引退後は毎年、草野球チーム「イチロー選抜KOBE CHIBEN」を率いて高校野球女子選抜チームと試合を行っているが、その試合前のフリー打撃でもやはりサク越えを連発している。
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