“1か月半の昏睡”と8か月の入院で「三途の川を見た」。コロナ重症化でエクモに繋がれ生死の境をさまよった43歳男性が告白
日刊SPA! / 2024年5月21日 8時53分
「真っ白い部屋で動けず、スマホもなく、栄養は点滴で摂取、聴こえるのは医療機器の電子音のみ。時間や季節も何もわからず、1人でただ天井を見るだけの日々。本当に退院できるのか、社会復帰できるのかなど考えていたら、虚無感や絶望感に襲われました。俺はコロナで死んでたほうが良かったのではないかと思うくらいまで、精神を病んでしまいました。何度も看護師に俺を殺してくれと懇願したのをよく覚えています」
◆「ひとみちゃんの肩にハンサムなおじいさんがいるよ」
なんとか、病院食が食べられるようになるくらいまで回復したところで、地獄のリハビリが始まった。
「手術による後遺症で、身体中が痛く、筋肉が完全に衰えてしまってました。歩く練習や簡単な筋トレなどをやらされたのですが、松葉杖がないと全く歩けないんです。転倒したり、手術の痛みや運動のキツさに耐えられずに何度もリハビリを中断してもらいました」
ひとみさんは日本でも5本の指に入るほどの重症患者で、日本では珍しい症例だったらしく、当初は治療法が確立されてなかった。なので、外国の論文などを参考に治療をし、ようやく翌年4月に長い入院生活も無事終了した。コロナに罹患してから、のべ9か月半の入院だったがいま現在もリハビリは続いている。
「退院して、久しぶりに飲みにいった時は嬉しかったですね。霊感があるという女友達と飲んだのですが、『ひとみちゃんの肩にハンサムなおじいさんがいるよ。見守ってくれてたんだね。だから死ななかったんだね』と泣きながら言われて。どんな容姿か詳しく聞いたら、意識不明の時見た川の夢で、向こう岸にいたおじいちゃんと同じ顔でビックリしました。そんな奇跡みたいなこともあるんだなと」
◆逃げ込み先だった「物語」で社会復帰
現在も、歩くときに杖が必要など、コロナ罹患による後遺症が残る中、死の恐怖が拭えないので心療内科に通っている。
しかし、3年半にわたるリハビリにより、ようやく仕事ができるくらい回復してきた。いまでは、生成AI×人間の小説家による、体験型ウェルビーイングサービス「変身文庫」という事業を立ち上げたりと本当の意味での社会復帰を目指している。
「今回、変身文庫の立ち上げのきっかけは自分のハードな人生の原体験にあります。今回のコロナも然り、過去には毒母親、いじめ、家庭内暴力、毒母親の自死。様々なことが、常に僕を生き辛くさせていました。そんな中で、一筋の光となってくれたのがさまざまな『物語(小説やアニメ)』でした。物語が、僕の逃げ込み先であり、支えであり、救いだったんです。だから、僕が物語から受けた救済を、同じように生き辛さで苦しむ人たちに提供できる場所を作りたい。それが、変身文庫の意味であり、自分の社会復帰の第一歩です」
一度は三途の川を見たというひとみさん。今後の活躍を楽しみにしたい。
<取材・文/山崎尚哉>
【ひとみ】
「変身文庫」(@henshin_bunko)の主宰。コロナを重症化させエクモまでいき、三途の川を見て、1.5か月の昏睡と8か月の入院から蘇った。
Xアカウント:@notEnough404
【山崎尚哉】
’92年神奈川県鎌倉市出身。ライター業、イベント企画、映像編集で生計を立てています。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆。Twitter:@yamazaki_naoya
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