「ラブホで出演作品が流れて焦った」現役男優が振り返る“一般女性”と交際する難しさ
日刊SPA! / 2024年5月31日 15時51分
――長くこの仕事を続けていくコツや大切にしている矜持があれば教えてください。
上條:いわゆるピンク業界なので、意外に思われるかもしれませんが、誠実な態度で臨むことじゃないでしょうか。この仕事は性行為におけるどんな技術があっても、現場に呼ばれなくなったらAV男優ではいられなくなるシビアな側面があります。
しかも、業界がとても狭い。どのくらい狭いかと言うと、撮影現場に向かう車の待ち合わせ場所がほとんど似た場所なほどです(笑)。私も別の車に乗りそうになったり、隣の現場に紛れそうになったりしたことがあります。当然、噂も広がりやすいですよね。
私が駆け出しのころは熱いAV監督がたくさんいて、怒られながらも技術指導などをしていただきました。私はそれをずっと台本の裏側にメモして、何度も復唱して自分の演技に役立ててきました。年月が経過して、ある監督からオファーがあったとき、「上條さんがすごく真剣にメモしていたのを、ADだった当時見ていたんです」といわれ、「見てくれている人はいるんだな」と感じました。
私の周囲のAV男優のなかには、職業がバレたことで昔の友人から遠ざけられて同窓会に行けない人もいるようです。幸い、私はもともと好奇心旺盛な友人が多いからか、そういうことはありません。ただ個人的には、たとえどんな職業であっても、それを長くやり続けるためには他者からの信頼を勝ち取る必要があって、それは意外と難しいことなんじゃないかと思います。
矜持と呼べる大仰なものは持ち合わせていないけれど、現場で私が必要としてもらえているとすれば、それは気持ちよく仕事をすること、居合わせたみんなが愉しめる方法を模索しているからなのかもしれません。ここまで続けてこられた日々に感謝しています。
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取材の最後、上條氏は「常に関わった人には楽しんでもらいたいんです」と語った。アダルトビデオ業界への認知度が以前より高まったとはいえ、偏見はなお根強い。またそこで働く者の背景にさまざまな事情があることも否定できない。だがそうした差異を超えて、共有した時間を彩ること。上條氏の屈託ない笑顔にはそれを実現する不思議な力が宿っている。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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