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都心のタクシー運転手を悩ませる“5mルール”という理不尽「そこで降りると言われても…」

日刊SPA! / 2024年6月13日 8時51分

 とくに羽田の国際線ターミナルは一般車、白タク、タクシーなどの車が入り乱れ、時間帯によって二重、三重停車で道が塞がれていることが珍しくない。

◆駅の改札・入口近くで停めやすい場所はバス停が占拠

 駅に向かうお客さんの中で、高齢者、ベビーカーや荷物の多い人たちはエレベーターに近いところを指定するケースが多い。運転手も「ここで降ろしてあげないと気の毒だ」と希望に応えたいのだが、そういう場所はほぼほぼバス停になっている。ターミナル駅だとバス停が5つくらい連なっていたりする。

 アプリ決済かつ身軽なお客さんなら、エイヤっと突っ込んで数秒の停車(それでも違反は違反だけど)で降りてもらえるが、ベビーカーや大型スーツケースをトランクに積んでいるとそうはいかない。支払いでお金のやり取りをした後、運転手も降りてバッグドアを開ける手間がかかる。そこにバスがやってくれば鬼クラクションで威嚇され、警察がいれば違反を取られる可能性も大。

 運よく駐停車禁止にならない場所だとしても、2つ目の壁が立ちはだかる。その正体はガードレール。これがまた、とんでもない強敵なのだ。

◆ガードレールの切れ目を探せ

 ガードレールは車道と歩道を分け、車から歩行者を守っている。都市の幹線道路沿いには柵のごとく設置され、正義の味方のような存在だ。しかし、切れ目が少なく仮にあったとしても電柱や街頭、植樹で塞がれていることが多い。柵は約1.1mの高さが基準なので健康な大人の男性なら何とかまたぐことができても、ズボンが汚れてしまう可能性が高い。

 いわんや女性や高齢者がまたぐのは無理な話。危険も伴うため、運転手は目的地付近でスピードを落として切れ目を探すことになる。すると、後続車からクラクション、お客さんには「どこまで行くつもり?」と怒られた挙句、前述の「バス停か交差点の歩道のあたりで降ろして」なんて要望が飛んでくる。

 そんな時「駐停車禁止なので停められません」と突っぱねればクレームが来る。かといって、ガードレールの切れ間のない道路上で降ろせば、お客さんは延々と車道を歩くことになり危険が伴う。さぁ、どっちを選ぶ? 毎回同じような自問自答を繰り返す。

◆「速やかに移動させてください」

 参考までに、筆者は先日、杖をついた高齢のご夫婦を乗せ、ある商業施設の前までお送りした。案の定、周辺はガードレールに阻まれ、安全に降りてもらう場所は横断歩道の近くに停めるしかなかった。仕方ないと歩道から1mほど離れた場所に停め、ご夫婦を介助しながら歩道に誘導していたところ、近くを通りかかったパトカーから大音量で「タクシーの運転手さん、そこは駐停車禁止です。速やかに移動させてください」と注意喚起。

 そりゃね、法律違反はわかっているさ。でもさ、この杖をついたふたりの状況が見えないかね?と思いつつ、さらに10秒ほど介助を続けていたら「繰り返します。そこは駐停車禁止場所です。早く移動させてください」とボリュームが上がり、肝を冷やした。

「交差点を過ぎて〇mくらい行くと切れ目があるからそこで降ります」と指示してくれるような素敵なお客さんは、滅多にいないのが現実だ。

<TEXT/真坂野万吉>

【真坂野万吉】
フリーライター。定時制で東京を走り回っている現役の中年タクシードライバー

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