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“過激な僧侶”のイメージが強い日蓮は「スーパー人生相談回答者」だった!? 手紙から読み解く日蓮の本当の姿

日刊SPA! / 2024年6月22日 8時51分

その中から主だったものを二十五通選び出して、現代語訳と解説を付したものが拙著『日蓮の手紙』(角川ソフィア文庫)であり、その拙著に基づいて番組「100分de名著」が構成されました。

◆親子関係に悩む信徒や家族を亡くした女性を励ます日蓮

その手紙を読むと、「君に忠、親に孝」が強調された封建社会にあって、父親との関係や、主君や同僚との関係における葛藤に悩む信徒に対して、何とか当事者に円満な解決をもたらし、よりよい関係を築くような具体的な対応策を指導している日蓮の姿が見えてきます。

また、子どもや夫を亡くした女性に、機会あるごとにともどもに涙して励ます日蓮もいます。病気がちで子連れで再婚し、夫の足を引っ張っているのではないかと自己嫌悪に陥りがちな女性を励ます言葉の温かさには、思わず涙を催してしまうほどです。

 妬まれて常に命を狙われている武士の四条金吾に対して、日蓮は先制攻撃や、先手必勝などと攻撃を指示することは全くなく、どのように命を守るのかということを微に入り細を穿った指導をしています。それは、“専守防衛”に徹するという内容であって、ここをもってしても日蓮が攻撃的だとする批判は誤りであることが理解されます。

◆手紙を通じて見えてくる日蓮の人柄

『法華経』を信奉する途上にあって、信徒たちが直面する不安や、悩み、問題に対して、日蓮は手紙で激励し続けました。それは、『法華経』の人間観、人生観、人間洞察に基づく人生相談であり、生活指導でありました。それを読んでいると、日蓮が、ある時は弁護士のようであり、ある時は教師、演出家、劇作家、心理学者、ネゴシエーター(交渉人)であるかのような多くの顔を持つ多才な人物像が見えてきます。

裁判事務を担当する問注所に日蓮が呼び出された時、日蓮の立派な立ち居振る舞いを見た人たちが、「人ごとに、問注は法門にはに(似)ず、いみじうしたりと申し候」(十章抄)という評判が広がったと言います。法廷での日蓮の毅然たる言動は、礼儀を尽くし、乱暴なところは全くなく、法門を論ずる時の激しさとは打って変わっていたのでしょう。

法門については、理詰めで書かれるから、その人柄や人間性は表われにくいものです。直接会ってみると、意外と人間味あふれる人であったということはよくあることです。

◆現役弁護士も、日蓮のアドバイス力に驚愕

それは、日蓮の手紙を読んで感じる意外さとも同じだと思います。フランスの社会学者で哲学者のラファエル・リオジエ氏(一九六七〜)も、日蓮の手紙を読んで、「日蓮について、これまで国粋主義者、右翼だと聞かされてきたが、手紙を読んで全く異なっていることに驚いた」とコメントし、相手に応じた人間性豊かな文章で書かれた手紙に関心を深めています。

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