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一部だけが潤う「医師の求人業界」にメスを。“儲からない”人材紹介プラットフォームが話題を集める理由

日刊SPA! / 2024年6月24日 8時51分

◆20代中盤の同期2人が亡くなって気づいたこと

 どんな医師であっても、患者を救いたいと考えているはずだ。そんな思いを鎌形氏に特に強く感じる背景には、忘れようにも忘れられない出来事を経験しているからだ。

「医療への敬意は幼いころからありました。小さい頃は喘息持ちで、よく病院にかかっていたんです。喘息はありふれた病気であり、軽く見られがちなのですが、発作が出たときは『死んでしまうのではないか』と本気で思うほど、ものすごい恐怖に襲われます。そのとき診察してくれたお医者さんが丁寧に処置してくれたことで、私は何度も救われました。

 母が薬剤師だったことや、医療に携わりたい思いもあって、自分も薬学の道に進みました。その後入社した製薬会社で、同期2人を病気で失ったんです。当時、20代中盤でした。志半ばで死んでいった仲間たちのことを考えるたび、『自分はもっと社会の役に立てるように努力すべきなんじゃないか』と反省したんです」

◆刺激的だった救命救急の現場

 その後、医学部へ転向。救命救急の魅力に取りつかれた。

「当初は別の方向へ進もうと思っていたのですが、研修で救命救急を経験したとき、『救命率を少しでも上げられるように、やるべきことを自信を持ってやれるようになりたい』と思ったんです。救命救急の仕事は非常に刺激的でした。目の前にいる患者さんは放置すれば数分で亡くなってしまう場合さえあるわけです。その状態から、自分の技術や他科との連携を駆使して何とか生存させる。無駄な時間があってはならない、濃密な仕事です。しかもスピーディーな判断力も求められる。熱中しすぎて、ふと気がついたら1日経過していたこともあります」

◆医師の仕事は「目の前の患者さんを救うこと」だからこそ

 生命を救う。その一点において、鎌形氏はこんな矜持を持っている。

「医師の仕事は目の前の患者さんを救うことです。そこには傷病までの経緯も人柄や思想も、何も関係ありません。勤務医時代は新宿で働いていたので、ラブホテルで不倫相手との行為中に心筋梗塞を発症した人もいれば、事故に巻き込まれてしまって重傷を負った若者もいて、さまざまな理由で人が運び込まれてきました。運ばれてきた当時は物言えなかった患者さんを蘇生させ、ICUでの管理を行い、目が覚めてリハビリを通して回復していくその日がくるように、私たちはひたすら力を尽くすんです」

 友人たちの死を通して自らの使命と向き合った若き鎌形氏の苦悩が、現在の仕事に通じている。患者利益に資するためには、良い医療を提供すること――。シンプルで核心をついた命題でありながら、医師という人材の往来に付随する金銭については、これまであまり焦点化されることはなかった。いま、気鋭の医師がその確かな胆力で既得権益にメスを入れていく。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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