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イーロン・マスクのスペースXが「技術革新を続けられる」破天荒な理由

日刊SPA! / 2024年7月1日 8時50分

◆3回目の打ち上げで、試験機が地球周回軌道に到達
 
着陸試験に成功したスペースXは、続けて第1段「スーパーヘビー」と組み合わせた実機打ち上げ試験に進んだ。ここからは、第1段スーパーヘビーは、「ブースター」、第2段スターシップは「シップ」と呼ばれるようになった。

2023年4月20日の初号機試験は、スーパーヘビーは回収せずにメキシコ湾に落とし、地球周回軌道に入った第2段スターシップは、太平洋上空で大気圏に再突入してハワイ沖に着水、水没して投棄する予定だった。打ち上げにあたって、エンジンは、改良されてより強力になった「ラプター2」が使用された。打ち上げ時に33基もの強力なラプター2エンジンの噴射によって射点設備が激しく損傷。打ち上げ後約2分から姿勢を崩し、機体は縦に回転し始めた。第2段の分離は不可能になり、打ち上げ後4分で機体は地上からの指令で破壊された。

打ち上げ終了後、イーロン・マスクはSNSのTwitter(現X)で“Learned a lot for next test launch in a few months.”(数ヶ月後の次の打ち上げに向けて多くを学んだ)というコメントを発表した。

◆必要に応じて改良する、という基本方針

2回目の試験は、初号機の失敗から7ヶ月後の2023年11月18日に実施された。2号機打ち上げ試験でも、初号機同様、1段は分離後に機体の姿勢と速度を制御しつつ落下して、カリブ海に逆噴射を使って軟着水、2段は地球をほぼ一周して大気圏に突入し、着陸動作を模擬しつつハワイ沖合の海上に同じく軟着水する予定だった。射点設備には強力な散水設備が新たに装備された。打ち上げ数秒前から大量の水をスーパーヘビーの直下に散水してラプターの噴射を受け止め、射点の損傷を防ぐというものだ。

ここでも「必要に応じてどんどん改良を加える」というスペースXの技術開発の基本方針が発揮され、2号機では、新たに第1段分離直前から第2段エンジンに着火する「ファイヤ・イン・ザ・ホール(FITH)」という動作シーケンスを採用した。

◆爆発で機体を失っても、Xに投稿された「おめでとう」の一言

ロケットは上昇する間ずっと重力に引かれている。このため一気に加速して上昇時間を短くしたほうが重力によるエネルギー損失が少なくて済み、打ち上げ能力が向上する。通常ロケットの段間分離は、エンジンを止めた状態で分離し、安全が確保できるまで十分に離れてから上段のロケットエンジンを着火する。この方法では、数秒から数十秒、無動力で重力に引かれて落下する状態になるのでその分打ち上げ能力が落ちる。FITHは無動力の時間をゼロにすることで打ち上げ能力を向上させる手法だ。
 
2号機ではスーパーヘビーは第2段の分離まで完全に動作した。新たにFITHを採用した第2段分離も成功。しかしスーパーヘビーは、分離後、姿勢制御を行って逆噴射しつつメキシコ湾に着水する予定が途中で爆発して喪失。第2段は途中まで完璧に動作したが、途中でエンジン燃焼が不調に陥り、飛行継続は不可能と判断した搭載コンピューターが自律的に機体を破壊した。

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