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夏の激安ラブホに潜んでいた“黒い影”。「立派に育った大物」の正体は…

日刊SPA! / 2024年7月1日 15時54分

 とか言いつつ、子どものようにそこから身を乗り出して室内を覗き込み、トトロごっこをする帆浦。その瞬間、視界をものすごい速さで黒い影が横切ったのを、確かに感じた。

「ん? 虫……?」

 そう、気にならないほどの虫だったらよかったんだが。

◆素早く動く黒い影が、正体を現す

 気のせいだと思いたかったが、それにしては存在感がありすぎた。とてつもなく嫌な予感……。男の浮気と害虫に対して、女の勘は高確率で的中する。そもそもよく考えたら、たくさんの植物に囲まれたこのホテルの立地環境では、室内にどんな虫が出てもおかしくないのだ。脳内に絶え間なく浮かぶ最悪のイメージ。真夏の蒸し暑い夜なのに止まらない鳥肌。とりあえず、隣の洋室で呑気にくつろいでいる彼を呼ばなければ。

「ねえ! 気のせいかもしれないんだけど、今そこに……」

 彼氏に確認してもらおうと大きめの声を出した途端、ちゃぶ台の足元の死角からものすごい勢いでそれが飛び出してきた。真っ黒でツヤツヤな体、不規則に動く長い触覚、間違いなく夏の天敵代表、ゴキブリだ。

 やっぱり気のせいじゃなかった!! どうしてよりによってこの部屋なの⁉ 本気でゴキブリだけは無理なんだよおおお!! 湧き上がるさまざまな感情が全て「ギャー!!」という渾身の叫びに変わる。この世の終わりのような絶叫を聞き何事かと駆けつけた彼氏に、取り乱しながらも状況を説明する。

「おー、立派に育った大物!」

 ビビりまくっている帆浦を横目に、彼氏はなぜか感心している。

 相手がゴキブリじゃなければ「立派に育ってくれて、お母さんも嬉しいだろうね!!」とかツッコんでいるところだが、今はそれどころではない。一刻も早くこの絶望的な状況を打破しなければ。

◆「そこのメニュー表とって」彼氏がとった独特な撃退法

 しかし、殺虫剤もハエ叩きもないこの部屋で、どうやってヤツを退治すればいいのか。スリッパやティッシュ箱の裏で叩いたらラブホの備品が汚れてしまうし、そもそも予測不可能な動きを繰り出されるんじゃないかという恐怖で、1ミリもヤツに近づくことが出来ない。

「どうしよう!?」と帆浦がオロオロしていると、彼氏がおもむろに部屋の隅にあったゴミ箱を掴んで、ゆっくりとゴキブリに近づく。

「ほっ」

 素早く上からかぶせて閉じ込め、次の指示を出す。

「そこの棚にあるメニュー表をとって」

 メニュー表なんか何に使うんだ…? と思いながらも言われたまま渡すと、彼氏はまるで丁半博打の壺振りのように、ゴキブリの上に被せたゴミ箱を激しくゆすり始めた。なるほど、ゴミ箱とメニュー表で挟みこんでそのまま外に投げ出す作戦だ。だが、元気いっぱいなままのヤツを閉じ込めようとしても、うっかり隙間から逃げだされる可能性があるから、あんなにゆすって動きを鈍らせようとしてるんだ! 突如始まる人間VSゴキブリのフィジカル対決。だが、相手は人間より遥か昔から存在し続ける強敵。そんな簡単にくたばるとは思えない。

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