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“スマホの失敗”が痛かったバルミューダ。「トースター」に代わるヒット作が“生まれにくい”理由

日刊SPA! / 2024年7月27日 8時53分

 もともと30億円程度だった同社の売上高はトースターの発売以降伸び、19年12月期には108億円となりました。特に21年12月期は巣ごもり需要によるトースターの爆売れが影響しています。売上のメインは国内ですが韓国や北米市場も開拓しており、22年度は韓国の売上高が43億円となりました。韓国ではインフルエンサーの起用や百貨店での陳列などの施策が成功につながり、日本と同じくデザイン性が評価されたようです。家電においてシンプルな“ロゴ無し”デザインが増える昨今、シンプルさを求める消費者の心理にマッチしたといえます。

 しかし一転、22年度以降は業績が急に悪化しました。キッチン関連は堅調なものの、上記の通り21年度から売り始めたスマホ関連製品が急に売れなくなっていることが分かります。

◆「ただ高いだけのスマホ」と酷評されてしまい…

 バルミューダはイケイケだった21年11月に初のスマホ「BALMUDA Phone」を発売しました。価格は堂々の10万4,800円。手のひらサイズ、丸みのあるボディが特徴です。10万円越えならハイスペックが予想されますが、これが価格に見合わない低スペックであり、国内外でかなり酷評されました。OSはAndroidでオクタコア、メモリ(RAM)は6GBです。データを記憶するメモリ(ROM)は外部SD非対応のスマホであるにもかかわらず128GBしかありません。スペックを見るだけでも10万円は高く、半分以下の価格設定が適正です。

 21年度はバルミューダの認知度やファンの存在もあり、スマホ関連では28.5億円の売上を記録しました。しかしその性能が明らかになると売上は伸びず、翌年度は8.7億円にまで減少しています。そしてついに昨年度、バルミューダはスマホ事業からの撤退を決めました。スマホ事業は売れなかったばかりか、「バルミューダ」のブランド力も傷つけたように思えます。

◆改善策は開発力を落とす方向に

 その後はホットプレートなど新商品を販売し、一定の評価を受けていますが、BALMUDA The Toasterに代わるヒット作を出せていないのが現状です。今年2月に発売した新型トースターの「ReBaker」はスチーム機能をカットしたうえで24,200円と従来品より安く、一見客を集めたい狙いが伺えます。

 一方で近年の業績改善策は商品開発力を落とす方向に走っています。デザイナー数は変わらないもののエンジニアはピーク時の約90人から今期1Q時点で57人となり、今年度の試験研究費も21年度と比較して3分の1以下となる3.4億円を予定しています。業績改善策として仕方ないと思われますが、開発力の低下は将来の稼ぎをじわじわと削ぐことになります。今後、同社からは目新しい商品が生まれにくく、似たような機能でデザインだけを変えた類似品が頻発されることになるかもしれません。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_

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