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“静かな住宅街”に佇む「入りづらい喫茶店」の正体。80代マスターの人生も“破天荒”だった

日刊SPA! / 2024年7月29日 15時52分

◆死ぬ前に息子さんに会いたいそうだが…

 取材中におしぼりやドリンクを出しテキパキと応対してくださる女性がおられた。マスターの元奥さんだという。「女と別れてから派手になった。むちゃくちゃだったよな。頭ん中パーンと爆発しちまってよー(笑)」。マスターがそんな話をしても元奥さんは横で終始にこやかに聞いている。

 悲嘆に暮れたマスターは、毎日、パチンコで4〜5万使いフィリピンパブへ。自宅も売り払い一文無し。ある日、屋根をペンキで塗り直した時のこと。「ハシゴから降りたら脇にベニヤの切り出しがあった。そんで絵を描いたら描けたもんで、おー描けるべやー」と。それからペンキで名画の模写から始まり、大好きなタカラジェンヌの絵(波乱万丈な姿に共感)、中でも力を入れたのが会いたくても会えない息子の絵だった。

 よほど描くのが楽しかったのか、店の外壁までどんどんペンキで絵を描いていく。ペンキが剥げたら描き直したり、余白があれば別の絵を描き足したり。やがてテレビ局が取材にやってくる。お客さんが急増。さらに別のテレビが取材に来る。じゃあもっと派手にしてやれと。「テレビには33回取り上げられた」と何度も耳にした。

 今でも未練があり、死ぬ前に息子さんに会いたいそうだが、今のところ会えずじまい。店の壁に「夢で再会」「ゆうき(息子の名前)」「聖女純子」とあるのはそのためか。ロシアのウクライナ侵攻があってから「戦争と平和」という看板が追加された。次に訪れた時はどんな外観になっているだろう。元奥さんに「よりを戻すことはないんですか?」と直球で聞いたら、笑いながら「ないない」とおっしゃられていた。たまに二人でドライブなどに行かれることもあるというが。

<取材・文・撮影/関口勇>

[百万ドル]
営業時間:10〜17時(月休)
所在地:〒484-0081 愛知県犬山市犬山瑞泉寺31−1

【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ

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