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“日本最大の刑務所”が「ふるさと納税の返礼品」に。“即完売”した見学ツアーに参加してみた

日刊SPA! / 2024年7月31日 8時49分

 また、終盤に案内された第19工場でも驚くべき光景が広がっていた。町工場のような建物の2階へ上がると、パソコンが整然と並ぶオフィスが突然現れた。しかし、働いているのはスーツ姿のサラリーマンではなく、白いタンクトップに作業帽の受刑者だ。外部から委託された業務を行っているという。

 その隣のガラス越しの部屋には「ビジネススキル科」という表札が掲げられ、専門学校のような職業訓練も行われていた。刑務官によると「その他に自動車整備科、介護コースなどもあり、自動車整備士や介護福祉士の資格を取得することができる」という。

◆ここでも高齢化が…日本人受刑者の平均年齢は「52.9歳」

 現在、同刑務所には約1500人の受刑者が収容されており、そのうち約350人は外国人で、残りの大半を「刑期10年未満の犯罪傾向が進んだ日本人受刑者」が占める。日本人受刑者の平均年齢は52.9歳。最高齢は94歳で、深刻な高齢化の波が押し寄せていた。

 そして、同刑務所の受刑者の過半数が「5回以上の入所」でもある。人生の大半をいくつもの刑務所で過ごし、非常に限られた期間しか社会で職に就いたことがないということだ。

 全国の刑法犯の検挙者数は減少傾向にあるが、2020年の再犯率は49.1%に達し、再犯者の7割が無職だった。つまり、仕事に就けないため再び犯罪に手を染めているのだ。

 再犯を防止し、円滑な社会復帰を実現するためには、世の中のニーズに合った職業訓練と社会の理解が不可欠になっている。

◆ヒントは「刑務所の文化祭」

 なぜ府中市は、このようなプリズンツアーを企画したのか。市の担当者は「ふるさと納税の返礼品の中に府中刑務所の作業製品があるのですが、受刑者の意欲向上に繋がっても、再犯防止にはなかなか結びつかなかった。そこで内部公開が人気を博している刑務所の文化祭をヒントに、再犯防止活動に繋がる新しいふるさと納税のアイデアとして発案しました」と明かす。

 ふるさと納税による住民税の流出に苦慮する自治体は多いが、「府中市も年間で約5億円が流出しています。ですが、このツアーで歳入を増やそうとは考えていないので、寄付金額を1万円に抑えました。あくまで国民に再犯防止活動を訴える一つの形として行いました」。

 6月24日に「上限20組」で募集したところ、たった6日間で“完売”。市は20万円の歳入を得たが、さまざまな準備のコストを考えれば、決して割は良くない。しかし、反響の大きさに手ごたえを感じている。

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