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赤ちゃんの寝かしつけに「スマホの音楽」はOK?デジタル映像・音声が脳に与える影響

日刊SPA! / 2024年8月6日 8時49分

 デジタル映像やデジタル音源は、そればっかりで育てるのには確かに問題がある。なぜなら、脳のレンジ(認知するのに得意な範囲)がデジタル情報のそれに絞られてしまうので、現実世界に対する勘が鈍くなるからだ。

◆育った環境によって視覚や聴覚の指向性が決まる

 聴覚は、育つにつれて、その指向性(聞こえやすい音の特性)が決まってくる。

 日ごろ耳にして、内容を識別する必要のある周波数帯に鋭敏に、そうでない周波数帯のそれに鈍くなっていくのである。母語によって使う周波数帯が違うので、母語が違えば耳が拾う音も違ってくるし、育った場所の自然音にも影響を受ける。

 視覚もそう。砂漠の民は、テラコッタ(赤茶色系)の色味を100色以上も見分けるという。私の友人が、サハラ砂漠で、現地の人に道案内してもらったとき、大阪育ちの彼には見えない砂漠の「模様」があるのを知ったという。

 日本人には、ただ一面の赤茶色の大地に見えるだけなのに、砂漠の民は、車が走れる道を見分け、待ち合わせ場所を特定できるのだそうだ。代わりに、私たち日本人は、緑色の識別に長けていると言われている。

◆デジタル映像やデジタル音源は、脳に悪い?

 こんなふうに脳は、日ごろ識別している情報に鋭敏になるとともに、そうでない情報に鈍感になっていく。

 全方位に鋭敏だと、とっさに処理する情報量が多すぎて判断が鈍くなるので、生きる環境に合わせて、その指向性を絞っていくわけ。その絞り込みを、主に幼児期に行っていく。

 電子機器を通して聞こえてくるデジタル音は、処理された信号音である。

 21世紀の音響技術はとても高度で、本物の音と区別がつかないように思えるけれど、それでも、自然音(アナログ音)の持っている複雑で不規則な音声波形を、一定程度はしょっているのである。脳は、脳の持ち主が自覚しているよりずっと鋭敏なので、それがわかる。

 もしも、赤ちゃんの聴覚をデジタル音にフォーカスしてしまったら、自然音の識別に鈍感になる可能性は十分にある。けれどそれは、成長期の耳にノイズキャンセル付きの耳栓を突っ込んで、自然音から遮断するような事態でしか起こらない。

◆判断すべきポイントは、自然音や生活音を遮断していないかどうか

 だから心配なのは、もう少し大きくなってからの、イヤホン突っ込んで長時間ゲームをするとか、ロックなどの激しい音楽をイヤホンで聞き続けること。

 音量が大きく、音質の急激な変化などがある刺激的なデジタル音を聞き慣れてしまうと、聴覚が刺激をフィルタリングしてしまうので、当然、日常生活での聴覚は鈍くなる。これが、最近、問題になっているのである。

 こういう「デジタル音源の問題」は、赤ちゃんの入眠を助けるために、「生活音を遮断しない状態で、いくばくかの時間、優しい音楽を流す」のとは、まったく別の話。基本的には、自然音や生活音より、著しく刺激が大きいかどうか、自然音や生活音を遮断していないかどうかで判断すればいいと思う。

文/黒川伊保子 構成/週刊SPA!編集部

【黒川伊保子】
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』

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