私有地に無断駐車されても請求できるのは「数百円程度」…迷惑行為に対しては「合法的な予防策」あるのみ
日刊SPA! / 2024年8月10日 8時50分
◆請求ができないなら「物理的な処置」は可能か否か
罰金が取れないならば、「無断駐車を発見した場合、タイヤをロックします」や「レッカー移動します」などの看板も見かけるが、こちらはどうなのか。
「タイヤをロックしたり空気を抜いたり、車を撤去することは『自力救済』になってしまいます。日本では、裁判などの司法手続によらず、自己の権利を確保する『自力救済』が禁止されているんです。つまり車両を傷つけてしまうと、刑事罰に問われてしまったり、損害賠償を求められてしまったりする可能性もあるので、注意が必要ですね」
自身の私有地内で無断駐車という不法行為が行われているとはいえ、他人のものに触れるのはやはりリスクが高いようだ。触れないようにと試行錯誤し、「自家用車で周囲を取り囲んで出られないようにした。私有地なので自由なはず」と語る所有者も筆者の周りに存在するが……。
「私有地に勝手に無断駐車された場合といえども、他人の車を出られないようにする行為は、自力救済禁止の原則に反しており、場合によっては、逆に駐車場オーナーが損害を賠償しなければならないことがあり得ます。また、自動車を使用できない状態にすることは刑法に定める器物損壊罪にあたる可能性もあります。(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
よって、直接の危害を加えていないからといって、違法性がないということにはなりません」
◆「自力救済が認められない」背景
所有者にとっては、請求も自力救済も思うようにできない、もどかしい状況。法律的には、自力救済とは「何らかの権利を侵害された者が、司法手続きによらず実力を持って権利回復を果たすこと」と定められているが、これが禁止されるようになった歴史的背景があるようだ。
「法治国家が誕生する近代以前は、司法制度が確立されていなかったため、自力救済に頼らざるを得ないという背景がありました」
まかり通った時代には、数々のトラブルもあったようで……。
「自力救済となると、双方の意見ではなく片側の一方的な決めつけで解決を図ることになるという側面もあり、突き詰めると最終的に権力・財力に勝る者の行為が常に正当化されかねないという危険性があるんです。自力救済の容認は自警団・反社会的勢力の私刑がはびこることにもつながり、社会秩序を保つことができなくなります」
私たち人間は「起こらなかったこと」を感じ取ることが難しい。自力救済が認められていたら起こっていたはずの多くのトラブルや混乱は未然に防がれており、それによって私たちの生活の安寧が保たれているのだ。
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