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「IQは68〜75程度だった」“境界知能”の23歳女性が“人に裏切られても”挑戦し続ける理由

日刊SPA! / 2024年8月20日 15時54分

◆「撮影後にホテルに泊まろう」と誘われ…

 現在、えりかん氏はYouTubeなどで自らの状況を発信している。最も嬉しいのは、多くの視聴者からリアクションをもらえることだと語る。

「同じ状況にいる人たち、あるいは境界知能を初めて知ったという健常者からの温かいコメントが届くことが多いです。学生時代に冷たい視線を受けていた身としては、直接の知り合いではなくても、世の中の人たちの優しい心根に触れ、励まされる思いです」

 だが美しい話ばかりではない。人に知られる存在になれば、当然、危険も伴う。

「あるYouTuberの方とコラボをさせていただく話が持ち上がったことがありました。私はその人のチャンネルを以前から見ていて、好ましく思っていたため、非常に楽しみにしていました。撮影そのものは滞りなく進み、次回の動画も撮ろうということでその場は別れました。

 次回撮影の打ち合わせを電話でしていた際、『次回は、撮影後にホテルに泊まろう』と誘われたんです。動画製作者として尊敬する方でしたが、下心を察知した私は、丁重にお断りをしました。するとその翌日、何度も何度もその方が電話をしてきて、延々と罵倒されたのです。これまではとても優しかったのですが、怒号のなかには『これだから境界知能は!』というような侮蔑もあって、『本当はそういう風に下に見ていたんだなぁ』と悲しくなりました。私は対等なコラボができたと思っていたけれど、相手からそう思われていなかったという事実に深く傷ついたんです」

◆それでも発信を続ける理由は…

 恐怖体験を経たあとも、変わらず各種SNSを通じて世の中に発信をしている。傷つく可能性がありながら発信を続けるのはなぜか。

「世の中にはさまざまな人がいて、こちらの善意を利用してくる人もいるのだということを学びました。ただそれでも、私は多くの人に励まされてきたから、私の発信で救われる人がひとりでもいるなら、続けたいなと思っています。知能指数が平均よりもだいぶ低いことは不安が多いですが、それによって世の中が嫌いになったり、やりたいことに挑戦するのを留まるほうが、私にとっては辛いんです」

 えりかん氏の視線は常に前に向かってまっすぐ注がれている。人に裏切られ、騙されても、厭世的になって斜に構える素振りすら見せない。

 偏差値、年収、フォロワー数――自分にまとわりつくあらゆる数字を誇ろうとする人間が多い中で、その凹みすら開示するあけすけさで応援される彼女の軽やかさに、数値化できない真の強さを感じる。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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