日本でしか通用しなかった「世界の亀山モデル」。液晶で伸び、液晶で散った悲しいシャープの歴史
日刊SPA! / 2024年8月24日 8時53分
◆日本でしか通用しなかった「世界の亀山モデル」
亀山、堺の両工場は当時でも珍しい国内の大規模投資でしたが、実のところ90年代後半より液晶生産を開始した台湾や韓国のメーカーよりも投資額は少額でした。そもそも規模で負けていたわけです。大量生産で液晶パネル自体がコモディティ化するなか、規模も小さいシャープはコスト競争力を失い、円高も追い打ちをかけました。また、販売の面でシャープは国内およびアメリカに注力し、新興国市場を軽視しました。対するサムスンのような韓国のメーカーは各国に人材を派遣し、地道に市場開拓に努めました。
テレビやパソコンの需要増加で液晶パネルの市場規模は拡大していたにも関わらず、製品のコモディティ化と販売力の軽視でシャープは新興国需要を取り込めなかったわけです。そしてリーマンショックで先進国向けの需要が落ち込む中、堺工場の稼働後すぐにシャープの業績は悪化に転じました。2012年3月期の売上高は前年比19%減の2兆4,559億円となり、最終赤字に至っては3,761億円にも膨らみました。
ちなみに2000年代初頭においてシャープは太陽光パネルで世界シェアトップを握っていましたが、液晶と同様に海外勢に負けてしまいました。
◆鴻海グループの傘下に
業績悪化に歯止めがかからず、16年3月にシャープは台湾の鴻海グループから3,888億円の出資を受け、同グループの傘下に入りました。鴻海グループはiPhoneや任天堂のゲーム機などを生産するEMS(電子機器の受託生産)大手の企業です。鴻海はシャープの液晶技術を欲しており、特にディスプレイ用半導体「IGZO」の技術を求めていたと言われています。
この出資によってシャープは16年3月期末時点での債務超過を解消し、以降は戴正呉氏の主導のもと、コストカットを進めました。具体的には原材料調達やオフィス賃貸料の見直し、数千人規模のリストラやマネージャー降格制度の導入などがあります。細かいところでは「堺工場内におけるエスカレーターの停止」や、「中国出張者は鴻海の施設を使う」といった施策があげられます。そして、これらのコストカット策が功を奏し、シャープは2017年3月期から22年3月期の間、営業黒字を維持しました。
◆ディスプレイ需要の低調で業績が悪化
しかし23年3期、と24年3月期は営業赤字となり、1,000億円単位の減損損失を出したことで最終損失はそれぞれ2,608億円、1,500億円と大幅な赤字となりました。コロナ禍におけるスマホ需要の低迷や、21年度以降のパソコン需要停滞に伴う液晶需要の減少が主な要因です。鴻海傘下で高コスト体質を解消したとはいえ新たな製品群を生み出したわけではなく、シャープの液晶依存体質は変わっていませんでした。
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