介護保険制度が始まるまで、ヘルパーは公務員だった「利用者の入浴介助さえできず」
日刊SPA! / 2024年9月11日 8時50分
刑務所の受刑者の入浴時間は、週2回・15分でした。『先輩、刑務所の受刑者の基準はこれなんですよ!』と憲法25条の“健康で文化的な最低限度の生活を営む権利”を持ち出し、説得しました」
るかさんは、生活保護・高齢者・障害者のケースワーカーに相談し、保健所の保健師やドクターと議論する場を設け、入浴介助のサービスをする権利を勝ち取った。
◆公務員ヘルパー時代のサービス時間は180分(3時間)
「介護保険サービスが始まる前は、今のように連日、利用者を訪問することはできませんでした。当時は週2回・1回3時間が平均的でした。だから、『訪問している時間以外に不便がないように、何をするかはその利用者と一緒に考えなさい』と先輩から言われました」
例えば、訪問していないときにもきちんと食事ができるように、カレーや豚汁など、日持ちをするメニューを作り置きしておくなどの工夫をしたという。
「昔より今のほうが訪問の頻度があるので、生活リズムはできやすいかもしれません」
また、障害者・高齢者向けサービスの間の垣根がなかったことや公務員であることで、介護拒否する高齢者の家庭にも入ることができた。
「今でも、ヘルパーが家に入ることに抵抗がある高齢者だとしても、区の職員ならば訪問を歓迎してくれる人がいます。また、高齢の母と精神障害がある息子の組み合わせなどは一緒に訪問することができました。今では、障害者のケアと高齢者のケアは財源も違えば、法律も違い、同じ事業所やヘルパーが対応することが難しい」
そんな公務員ヘルパー生活にも終わりが訪れた。2000(平成12)年から、現行の介護保険法が施行されることになった。
「介護保険制度がスタートすると、ホームヘルパーサービスは民間の事業所に委託されます。それなので、1995年頃に、今後、どうするかの面談がありました。だけど、私は生活支援の有効性を立証したかったので、現場から離れられず退職しました」
そのまま公務員として定年退職まで勤めれば、退職金は2,000万円近く支給された。だけど、それよりも介護現場で人と接することを、るかさんは選んだ。
◆若い世代に伝えたいこと
最後に若い世代に伝えたいことを聞いた。
「自分の家でも家事もしないのに、高齢者宅の家事を支援できるのか不安に思う人も多いです。私自身も自宅での家事は好きではないです。仕事を通じて、その人1人1人の家事のやり方を教えてもらえる。生活文化を知ることが面白さです。経済力や知識も含むその方の生きてきた道や、現状を伝えてくださるので、丸裸の人として受け入れてもらわないとできない仕事ですが、そこが面白さや緊張感につながります」
2024年度の介護報酬改定では、訪問介護は、サービス時間も単価も下がり改悪された。だけど、施設や病院ではなく、住み慣れた自宅で最期を迎えたい高齢者は多い。高まるニーズと苦しくなる訪問介護事業所の経営。るかさんらが提訴した国家賠償請求訴訟は、その現状を変えるきっかけとなるか。
<取材・文/田口ゆう>
【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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