『虎に翼』が最後まで熱狂を生んだ理由。朝ドラの常識を覆す“メッセージ性”の強さ
日刊SPA! / 2024年9月27日 8時48分
◆珠玉の“名セリフ”の数々
セリフにも力があった。大正期から昭和後期の物語であるものの、現代人への苦言とも受け取れる言葉が多かった。
「女性の真の社会進出とは、女性用の特別枠があてがわれることではなく、男女平等に同じ機会を与えられることだと思います」(寅子)
寅子が家庭裁判所のPRのため、ラジオに出た第72回(1951年)の言葉だった。
「男女平等に近づいたと思うと、ぶり返しが来る。時代とともにより良い世の中になっていいはずなのに」(寅子)
司法修習所幹部が女性を侮辱する発言をしたあとの第118回(1969年)に口にした。正論にほかならない。
ほかにも正論が相次いだ。吉田氏は意識的にそうしたのだろう。なにしろ桂場に「正論に勝るものはない」というセリフまで用意したくらいだから。第54回(1948年)のことだ。寅子が家庭裁判所設立準備室で意見調整に苦労し、人は正論だけでは納得しないとボヤいたときの言葉だった。桂場の言葉は続いた。
「正論は見栄や詭弁が混じっていてはダメだ。純度が高ければ高いほど威力を発揮する」(桂場)
◆視聴者も正論と向き合った
そもそもこのドラマは観る側が正論と向き合うことがあらかじめ約束されていた。第14条がテーマで、男女差別や民族差別などへの反意、さまざまな偏見への抗議が盛り込まれていたのだから、そうなる。世間では正論の影が薄くなるばんりなので痛快だった。
朝ドラは牧歌的な作品が目立ち、メッセージ性も弱い作品が多い。『虎に翼』は違った。示唆に富んだセリフが多かった。寅子はこんな言葉も口にした。
「誰でも失敗するの。大人もあんたも。でも真っ当な大人はね、1度や2度の失敗で子供の手を離さないの、離せないの。関わったら、ずっと心配なの」(寅子)
大人たちを信用せず、居候先の寅子の家も飛び出した戦災孤児・道男(和田庵)を、諭した言葉。子育ての極意のようだ。
第68回(1950年)では寅子のこんな言葉があった。吉田氏からのメッセージだったのではないか。
「おかしいと声を上げた人の声は決して消えない。その声がいつか誰かの力になる日がきっと来る。私の声だって、みんなの声だって、決して消えることはないわ」(寅子)
◆最後のエピソードに据えた専属殺人
寅子はあきらめずに声を上げることの重要性を説いた。明律大教授で最高裁判事の穂高重親(小林薫)が、「尊属殺人の重罰規定は違憲」と主張したが、少数意見として退けられた直後のことだった。
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