「東京メトロが新規上場」。わずか半年で公募割れした日本郵政と“様相が異なる”理由
日刊SPA! / 2024年10月17日 8時53分
まずは足元の業績から見ていきます。
2024年3月期の売上高に当たる営業収益は、前期比12.7%増の3892億円、営業利益は2.7倍の763億円となりました。コロナ禍から急回復しているものの、売上収益・営業利益ともに2020年3月期の水準を1割下回っています。経済活動が再開したにも関わらず、完全回復はしていません。成長性は失われているようにも見えます。
しかし、伸びしろとして期待できる要素が2つあります。1つは新線の建設。もう1つが不動産開発です。
東京メトロは有楽町線と南北線の延伸を計画しています。住吉駅から東陽町、豊洲駅を結ぶものと、白金高輪駅から品川駅を結ぶものです。特に品川との接続は大きいでしょう。
東京メトロは東京都内で利用者数が多い10駅のうち、9つの駅と接続していました。6位の品川駅だけが欠けていたのです。2022年度の品川駅の利用者数は77万2000人。
東京メトロは1日平均652万人が利用しています。接続する駅が増えて利用者数が増加すれば、それだけ収益性が高まることを意味します。
延伸した有楽町線と南北線の開業は、2030年を計画しています。
◆“非鉄道事業”不動産開発が活発化?
収益性を高める点において、不動産事業も外せません。東京メトロは2024年3月に東京メトロアセットマネジメントを設立しました。これは不動産投資信託(リート)に進出したことを意味します。リートは投資家などから資金を集め、東京メトロが所有している不動産を売却。その不動産が生み出すキャッシュフローで投資家に還元し、東京メトロは売却した資金で開発を進められるというもの。
東京メトロはすでに「渋谷ヒカリエ」や「渋谷マークシティ」、「ハラカド」などの不動産賃貸を行っています。2029年には新宿駅西口に高さ260mの高層ビルも新たに誕生する予定。
東京メトロの不動産による営業収益は全体の4%にも達しておらず、規模は大きくありません。しかし、リートによって資金の調達環境が整えば、不動産開発を活発化させることができます。上場後の非鉄道事業の強化は注目に値するでしょう。
◆インフレ下でも積極的な投資。営業利益率が…
東京メトロの営業利益率に注目すると、2024年3月期は19.6%で、コロナ前の2020年3月期を上回る水準まで回復。人件費や水道光熱費が高騰する中でも、稼ぐ力そのものは取り戻しています。2023年に28年ぶりの運賃値上げに踏み切った影響もあるでしょう。
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