大阪王将「ナメクジ大量発生」SNS投稿事件。告発した元従業員が犯した“最大のミス”とは
日刊SPA! / 2024年10月19日 8時54分
「『偽計』にはウソをつくことだけではなく、たとえ投稿が事実であっても社会通念上許されない手段で告発したことも含むと考えています。本件の告発方法はSNS上であり、度が過ぎているため『偽計』の成立は認めます。ただ、起訴内容で読み上げられたウソとされる投稿については、被告人はウソをついていないと考えています」(弁護人への取材から)
要するに、被告人の主張は「ウソ」をついていないものの、偽計業務妨害罪は認めている。罪を認めざるを得ないのには、「勇気ある告発」と評価された被告人が犯してしまった最大の「ミス」があったのだ。
もっとも、適切な手段を用いれば告発者は保護される。現に、被告人を擁護する声の中には、「公益通報者保護制度」を指摘するものも多い。「公益通報」とは、事業者の法令違反行為を知った従業員が組織内の通報窓口や行政機関などに通報することであり、通報者に対しては解雇や減給、損害賠償請求などの不利益な取扱いを禁止する制度である。
ただし、被告人は保護対象外なのだ。告発の動機は「復讐心」と認められ、悪意が前提。そして、被告人の犯した最大の「ミス」は通報先がSNSだったこと。「公益通報」の要件として、通報先が「事業者内部」や「権限を有する行政機関」などと定められているが、被告人はSNSに投稿して不特定多数に晒してしまったのだ。
適切な行政機関に通報すればよかったのだが、被告人の告発の動機が「復讐心」から社会に拡散されやすいSNSを選んでしまったのだろう。
◆「SNS告発投稿」の危険性
昨今のSNSへの投稿には危険がはらんでいると、Xで約20万人以上のフォロワーを有するA氏は語る。
「ここ数年のSNSは、無法地帯化しているといえます。何か投稿すれば、それを揚げ足取りのように誹謗して拡散する。SNSは社会に発信する力がとても強いので、一言の発信でも命がけです……」
そして、この発信力を用いた“告発投稿”も後を絶たない。当然、本件のように「公益通報」にはならないため、告発投稿が発覚して会社を解雇されたとしても、解雇の不当性が認められずに有効となってしまう。さらにはSNSを用いると、告発の手段の相当性を欠くという理由から、告発者として十分な保護を受けられないまま「逮捕」という形も十分にあり得てしまうのだ。
本件も当初は、「威力業務妨害罪」で逮捕されており、SNSに投稿したことが営業妨害をさせた「威力」と判断されたものと思われる。その後、検察側はナメクジの大量発生はウソだということが立証できると判断し、「偽計業務妨害罪」で起訴となったのだろう。
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