“野村克也の愛弟子”が目の当たりにした原監督の“采配の妙”「あえて投手に代打を出さず…」
日刊SPA! / 2024年10月26日 15時52分
原辰徳氏 ©産経新聞
10月22日、オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブの橋上秀樹監督の退任が発表された。来季からは巨人の一軍コーチに就任するとの報道もあり、実現すれば旧知の存在である阿部慎之助監督の右腕として豊富な経験を活かすことになる。
監督を務めていた野村克也氏のもと、楽天でコーチとしての経験を積んだ橋上氏。巨人のユニフォームに袖を通していたのは、2012年から14年のシーズンになる。当時のフロントからお声がかかった際、巨人の野球を間近で見られることは、ひとりの野球人として大きな財産になると確信していたという。
そして実際に現場で働いてみると、数多くの驚きと気付きがあったそうだ。今回は、野村氏が「オレにはマネできない」と称したとされる「原辰徳監督の采配」についてのエピソードを『だから、野球は難しい』(小社刊)から紹介する。 ※本記事は同書より抜粋し、適宜編集を加えたものである
◆ギャンブル性の高い作戦を好んだ原監督
原監督は、ギャンブル的な采配を用いることが多かった。たとえば同点、もしくは1点ビハインドの場面の試合の終盤で、2アウト走者一塁という場面で打席に投手が入ったとする。通常であれば投手ではなく、代打を起用してどうにか得点を奪おうとするのがセオリーだ。
だが、原監督は投手をそのまま打席に立たせて一打席を任せる……かと思いきや、初球に一塁走者を盗塁させて、二塁に進めたところで、代打を送る、ということをしばしばやっていたのだが、この策が効果的であるようには思えなかった。
◆長い監督経験のなかから導き出した作戦だった?
仮に初球がストライクだったとして、打度に入って一球見逃してストライクをとられようものなら、あっという間に追い込まれてしまう。そうなると、相手バッテリーは極端な話、「3球ボール球でもいい」という心理的に余裕が出てくる。反対に打者は「何が何でも打たなければいけない」と心理的なプレッシャーがかかって、ストライクからボールになるゾーンに投げられたら、手を出してしまいがちになる。当然、結果は芳しいものではない。
このようなとき、原監督はベンチで、「まともにストライク勝負してくるわけがないだろう」と怒り心頭に発することもあったのだが、起用される選手の側からすれば、すでにワンストライクになっていることで、ハンディキャップを背負った場面でどうにか対処せざるを得ない。
これは原監督の長い監督経験のなかから導き出した作戦だったように思える。つまり、「あえて投手に代打を出さずに打席に立たせ、初球に一塁走者を走らせば、高い確率で成功するだろう」と分析していたからこそ、成立した作戦だったというわけだ。
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