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世帯年収1000万円弱でも生活は苦しい…“底辺マンション”の清掃員として働く38歳主婦の嘆き

日刊SPA! / 2024年10月26日 8時53分

 倉庫前に並べ終えるのは、午前7時半前後。1時間半もかかる。その後、エントランスと3階から1階までの階段や廊下の掃き掃除をする。階段や廊下の水拭きは、週に1回。手すりや郵便物入れは毎日、水拭きをする。これらを終える頃に午前9時となる。敷地内の草むしりは、1か月に数回しかできない。ゴミの分別で時間をとられるためだ。

 マネージャーにはその旨を書いてメールを送るが、こんな返答が来る。「独身者が多いので、ごみは少ないはず」「外国人が数人住んでいるから、分別ができていないのかもしれない」「家賃が10万円を超えるから、独身者でも生活水準が比較的高い。分別は、ある程度はできていると思う」。

◆住人の誠意を感じるごみ

 東谷は、バカバカしくなる。結婚の有無や国籍、収入額ではなく、分別を根本から知らないのだと思う。東京都、市役所や管理会社、清掃会社が丁寧に繰り返し説明をしていないところにこそ、問題があるとも考えている。

 それでも、分別の仕事をするのは生活費を稼ぐためである。そして、心を打たれたことがあるからだ。プラスチック製容器包装を捨てる袋に、オーブントースターがつ1入っていた。20を超えるねじをドライバーでゆるめ、バラバラにしてあった。しかも、トレイや焼き網、本体をそれぞれハンマーらしきものでたたき、ぺちゃんこに潰してある。電源コードは、5センチごとに切ってあった。

「きっと3~4時間かけて、ここまでバラバラにしたのだと思う。たぶん、ほかのごみからして会社員だったはず。仕事を終えてから、マンションの部屋で懸命にこわしたんじゃないかな。大変だった気がする。入れる袋は不燃物にすべきだけど、住人の誠意を感じるから腹が立たない。私もきちんとしないといけない、と思った」
 
 家では2人の子にごみの分別を実体験にもとづき、説明し、教えている。さすがに大人のおもちゃは言えないが、可能な限りでリアルに伝えている。ゴミの分別の最前線では東谷のような清掃員がいる。私たちが生活できるのは、この人たちのお陰でもあるのではないだろうか。

<TEXT/村松剛>

【村松 剛】
1977年、神奈川県生まれ。全国紙の記者を経て、2022年よりフリー

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