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藤田菜七子「電撃引退」による競馬界の影響は…。女性騎手「ドミノ倒しの危機」の可能性も

日刊SPA! / 2024年11月2日 15時54分

 まさにあっという間に競馬界を去ってしまった菜七子元騎手だが、9年近いキャリアの中で残した功績は決して小さくない。重賞勝利など騎手としての実績はもちろん、彼女の姿に憧れを抱いた女性騎手が次々と競馬界の門を叩き、ここ数年で一気に増加。JRAの現役女性騎手の数は6人に上る。

◆6人の女性騎手の“厳しい現在地”

 しかし、その女性騎手たちも決して順風満帆というわけではない。一昨年にデビューした今村聖奈騎手は、1年目に重賞勝利を含む51勝を挙げる快進撃を見せたが、昨春のスマホ問題を機に失速。2年目に勝ち鞍を25に減らすと、今年はケガなどもあったとはいえ、いまだ4勝にとどまっている。騎乗回数自体も激減しているのが現状だ。

 逆に昨春のスマホ問題を発奮材料にしたのは、今村騎手の1年先輩にあたる永島まなみ騎手だった。3年目の昨年は、自己最多を大きく更新する50勝をマークしてブレイク。すると、今年6月のマーメイドSで重賞初勝利を飾り、“最も勢いに乗る女性騎手”として注目されている。

 ところが、7月末まで25勝していた永島騎手も、8月以降は3か月間で3勝にとどまり、10月に至っては58回の騎乗で勝利なし。22年9月以来となる月間未勝利の屈辱を味わった。

 また、永島騎手や今村騎手に限らず、伸び悩んでいる女性騎手も少なくない。有望株の一人、小林美駒騎手は先週末にケガから復帰したばかりで、同期の河原田菜々騎手は約3か月間も白星から遠ざかっている。

 古川奈穂騎手は今年の勝率が昨年比で半減。ルーキーの大江原比呂騎手は4勝を挙げているが、体重調整に苦労し、複数回の過怠金を科されている。菜七子元騎手に憧れてこの世界に入った女性騎手たちも、決して順調とはいえない状況だ。

◆女性騎手の特典“菜七子ルール”とは

 また、菜七子元騎手が残した功績の一つに、“菜七子ルール”と呼ばれる減量特典がある。女性騎手なら無条件で与えられるもので、デビュー時の4kg減から始まり、勝利数やキャリアに関係なく永久に2kg減が保証されるハンデのことである。

 かつてオーストラリアなどでも同じような減量特典の導入の動きがあったというが、女性騎手らが自ら反対し、今も男性騎手とハンデなしで戦っている。

 一方、日本では菜七子元騎手の人気が高まっていたこともあってか、2019年にこの新ルールを導入。斤量1kgは1馬身の差が生まれると言われるだけに、女性騎手にはかなり有利なルールになっていることは間違いない。

◆“菜七子ルール”が逆差別になる可能性も

 JRAではエージェント制の導入で、一部の有力騎手に有力馬の騎乗依頼が偏る傾向がある。今後、「女性だから乗せてもらっている」という穿った見方をする男性騎手が現れてもおかしくなく、“菜七子ルール”が逆差別になる可能性も否めない。

 菜七子元騎手の突然すぎる引退、菜七子ルール、そして減量失敗などの影響で女性騎手に逆風が吹き続くことになれば、再び女性騎手がJRAから姿を消す事態に直面してもおかしくないだろう。女性騎手自らが“ドミノ倒し”の危機を止められるか、今後の動向に注目したい。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

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