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低視聴率で苦しむ『おむすび』だが、見どころは“本来の姿”を取り戻した橋本環奈にアリ

日刊SPA! / 2024年11月8日 8時53分

同作の製作総指揮に名を連ねたKADOKAWA代表取締役・井上伸一郎は、製作発表記者会見(2015年)前の2013年、福岡のアイドルグループに所属していた中学3年生の橋本をイベント中に捉えた、いわゆる「奇跡の一枚」と呼ばれる写真に惚れ込んだひとり。事務所宛に橋本を主演にしたいとメールを送るほどの力の入れようだったわけだけれど、そうした背景を抜きにしても同作の橋本は、あの名台詞「カ・イ・カ・ン」を冒頭第一声として新たな血肉とするようにありあまる才能をだしきった。

日本映画界のトレンドに目を向けるなら、少女漫画を原作とするいわゆる「きらきら映画」全盛期。特に2016年は、「実写化王子」の異名を取った山﨑賢人主演の『オオカミ少女と黒王子』やこちらは少女漫画ではなく小説原作だが高畑充希と岩田剛典がW主演した『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』など、きらきら映画の金字塔的作品が続々公開された当たり年だった。

◆リアリズム映画の俳優だったこと

山崎と橋本は『斉木楠雄のΨ難』(2017年)や『キングダム』シリーズ(2019年〜)など、漫画原作の大ヒット実写化作品で共演することになり、橋本もまた実写化のイメージが色濃い俳優のひとりになった。ただし、『セーラー服と機関銃-卒業-』の翌年に公開された『ハルチカ』の橋本は、冒頭から疾走感を画面上に導き、その時点ではまだ実写化以前、どちらかといえばリアリズム映画の俳優だったことをここで確認しておかなければならない。

実写化王子としての山崎賢人の魅力とは、漫画内の2次元キャラクターをもろともせずに映画内に生身の存在として翻訳する能力者であること。それに比べると、『キングダム』シリーズを通じて河了貂を演じる橋本は、衣装を着せられた着ぐるみ感が強調されるだけで、漫画から映画への翻訳があまりうまくいっていない。

非現実的な役柄ほどいかに現実的に演じ、さらにその上で映画空間にしか感じられない存在感におさまるのか。映画俳優に求められる素質はこうしたシンプルな存在論に由来する。それが映画俳優の色気でもある。「奇跡の一枚」が今でも神話的に語られているのだとするなら、それこそ映画初出演作『奇跡』(2011年)で是枝裕和監督が小学生の橋下から引き出した存在の色気はもはや有効ではないのか?

◆こういう生身の橋本環奈を待っていたんだ!

そんな疑問符を身勝手に浮かべるとき、リアリズム映画時代への懐かしさにある程度応えてくれるのが、『おむすび』なのである。ぼくらはこういう生身の橋本環奈を待っていたんだ(!)。実際、本作の橋本自体が物語の序章となる第1週から第2週にかけて、待つことに徹する存在として描かれている。

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