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長州力、人気番組での言動に「仕事舐めるな」批判も“かつての姿”とのギャップに驚いたワケ

日刊SPA! / 2024年11月9日 8時53分

 やはり大仁田厚とのやり取りでしょうか。くりぃむしちゅーの有田哲平の“またぐな”のモノマネのあれです。

 きっかけは、1998年1月をもって引退をしていた長州に大仁田が挑発を繰り返したこと。大仁田は電流爆破マッチでの対戦を要求したものの、当初長州は突っぱねていました。

 しかし、これを機に1999年から大仁田は新日本に参戦。しつこく長州に絡み続けた結果、とうとう2000年7月30日に対戦が実現することになったのです。事件は、この試合の1ヶ月前に起きました。

 すでに対戦が決定したのに、大仁田はわざわざ嘆願書を手渡そうと練習中の長州のもとへやって来たのです。「オレは礼儀を守りたいんじゃ」と意図を説明する大仁田でしたが、長州は頑なに嘆願書を受け取ろうとしません。そこでさらに大仁田が近づこうとしたところで、伝説のフレーズが生まれます。

<(フェンス内に)入るなコラ! 入るな! 入るな、入るなよ。またぐなよコラ! またぐな。またぐなよ、またぐな。またぐなよ絶対に>(『東スポWeb』2022年12月18日)

 同じ言葉を執拗に繰り返すのが長州です。ただし、一つ一つの音量、ニュアンス、間合いが異なるので、いちいち緊迫感が増していく。「コラ!」は、ドラムのスネアみたいなもの。滑舌が悪いなりにビートが生まれます。

 橋本真也との“コラコラ問答”では、「何がコラじゃ!コラ!」(橋本真也)という名言まで生まれました。ケンカを吹っかけた相手のポテンシャルも弾き出す、長州の「コラ!」なのですね。

◆当時からは想像できない現在の姿

 長州力というプロレスラーは、この試合に至るまでの過程を劇化するのがとても上手だったのです。この抗争があるから、一発のチョップ、キックに通常以上の痛みが込められる。試合に憎しみという意味が発生するので、ファンは熱くなり感情移入してしまうのです。

 他にも、有田哲平や長州小力のモノマネでも有名な「キレてないですよ」を生んだUインターとの抗争や、ザ・グレート・ムタとのタイトルマッチに敗れた控室で、ぶぜんとパイプ椅子に座りながら「ムタはどうったの?(ムタはどうしたの?の意)」と、モールス信号のような口調で振り返る様子なども印象的でした。

 おっかなくてピリピリした長州力は、筆者の少年時代に大きなインパクトを残しました。

 その姿を知っている人からすれば、『アイ・アム・冒険少年』での長州力は、なんと穏やかだろうと思うはずです。途中でリタイアする理由をちゃんと説明している。「コラ!コラ!」言ってスタッフを威嚇しない。そして、一度去った脱出島を、二度とまたぐことはしなかった。

 今日の長州力の姿を想像できたプロレスファンはいないでしょう。

 これからも、バラエティタレント、長州力を楽しみにしたいと思います。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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