6年間ネットカフェで生活する41歳男性、妻子アリ会社員なのに「家に帰れない」ワケ
日刊SPA! / 2024年11月10日 8時54分
田中孝司さん(仮名・41歳)パチンコにハマり家庭崩壊。妻からの三行半を待つ状態
貧困問題の象徴「ネットカフェ難民」という言葉が’07年に生まれ、その後東京都の一斉調査で都内に4000人いることが判明してから6年。現在、問題視されているのが、長期化だ。出口の見えない実態に迫る。
◆ギャンブル依存症を抑えるためにネカフェへ
会社員として働きながら“あえて”ネットカフェ生活を送る人もいる。田中孝司さん(仮名・41歳)が今のネカフェに暮らすようになったきっかけは、ギャンブル依存症だった。
「パチンコに450万円を使い込んだのが妻にバレたんです。当時はすでに子供が生まれていましたが、家にいると家財道具などを売ってパチンコ代にしてしまうのが目に見えていた。それで妻と相談し、家を出ることにしました」
それから6年。ネカフェから会社に出勤して給料は妻に渡し、月のネカフェ滞在費4万円と最低限の生活費を送金してもらう生活を続けている。パチンコでできた借金数百万円の返済も残っている状態だ。
◆6年間、一度もパチンコには手を出していないが…
妻との連絡は月1回程度の生存確認のみで、日々成長する子供の写真を見て胸を焦がす毎日だ。
「食事は主にスーパーの弁当やインスタント食品で済ませ、寝心地の悪いブースでは疲れもとれない。体重も5㎏ほど減りました」
唯一の娯楽は漫画だが、『賭博黙示録カイジ』を読んだときは心がざわついたという。
“禁欲生活”のおかげでこの6年間、一度もパチンコには手を出していないというが、帰宅のめどは立っていない。
「依存症治療の専門機関に相談したことはあります。でも家に戻ったら、パチンコを再開しないだけの自信がない。子供にはいずれ正直に伝えようと思っていますが……」
◆「ネカフェのほうが楽だ」“見えない”貧困層の存在
孤立したネットカフェ難民に対しては、どのような支援が有効なのか。生活困窮者への支援を行う「なないろ」の阿曽卓氏はこう解説する。
「我々の場合、行っている支援は大きく3つで、まず生活保護の申請、次に一般住宅への移行、そして就労支援です。申請が通れば月13万〜14万円が支給されるので、それを元手に家賃5万3700円の住宅を紹介しつつ、ハローワークに付き添って定職探しを後押ししています」
しかし、実際に社会復帰に至るのは「全体のわずか数パーセント」と明かす。
「まず生活保護を受ける段階で半数ほどが挫折し、さらに就労する段階で多くの人が諦めます。生活保護を受けるのに抵抗があったり、うつ病や対人不安などの精神疾患から毎朝起きられなかったり、楽して生活保護を受給したいと捉える当事者が多いです。昨今では、月10万円ちょっと稼いで、ネカフェで自堕落に暮らしているほうが楽だと考える『見えない貧困層』が増えています。確かにネカフェは快適かもしれませんが、怖いのはいざ病気など問題が起こった際に手遅れになりやすいこと。滞在期間が長いほど就労の選択肢も狭まり、社会復帰の意思も薄れていきます」
また、見えない貧困層こそ支援に繋がりづらい、あるいは支援を拒否するという課題もある。そこで重要なのは、早期発見と早期支援だという。
「貧困は病気と同じで、早い段階で手を打てば、悪化せずに済むケースが多いです」
状況が長引くほど、困難になるのは想像に難くない。
【一般社団法人なないろ 阿曽 卓氏】
東京23区で生活困窮者の住まい探しを専門に支援活動を行う。毎週土曜日、14時より都庁下で食糧配布や生活相談を実施中
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[ネカフェ長期難民]の実態]―
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