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大阪の「100円たこやき」店主を直撃。オープン時は人件費ゼロ、お金を得るよりも大切な“資本”とは

日刊SPA! / 2024年11月13日 8時52分

なぜなら、「子どもたちがたこ焼きを無料で食べられるということ以外に形として何か残るようなリターンはないですし、月々使われなかったチケット分は僕の人件費になるからです」と続ける。

◆これから先もずっとつきまとう不安

昨年2023年10月頃からサポーターが増え、いまは“たこやきチケット”の供給も安定。最近ではたこやき先生の人件費がようやく捻出できるようになってきたという。2024年9月現在の公式サポーターは600人以上。秋冬などたこ焼きが恋しい季節には、多いときで1日に60~70人程度もの人が足を運んでくれるようになった。

「ただ、サポーターは永遠ではないので、減ってしまうこともあります。サポーターがいなくなれば、無料たこ焼きの提供はできなくなるし、タダ働きに逆戻り。そういった不安は、この先もずっとつきまといます。

それでも毎日が楽しいです。オープンから3年以上が経ついま、友達と呼んでいいのかどうかはわからないんですが、年齢を問わず気軽に雑談ができるような関係性が築けているのではないかと思います。教師と生徒や職場の人間関係などとは違うコミュニティです」

たこやき先生の言葉を裏付けるかのように、「100円たこやき」は取材時、オープンの15時半前から子どもたちで賑わっていた。そして多くの子どもたちが、たこやき先生に話しかける。それは、「暑い」とか「店の2階のクーラーが効かない」とか、他愛のないこと。

「いまの現状を見て、子どもたちの居場所づくりのために店をオープンしたのかと聞かれることもありますが、そうではありません。自分のなかに不足していた“社会関係資本”を見つめ直して小さなコミュニティを築いた結果、良い方向に進んだという感じです」

◆たこやき先生が築いた新しいコミュニティ

新しいコミュニティを築くことに成功したたこやき先生だが、たこ焼き屋を開くとは想像もしていなかったとか。紆余曲折を経て通信制高校の数学教師となり、「100円たこやき」をオープン。そんな彼に共感する多くの “サポーター”により、支えられている。

「割合的には少ないですが、店舗でチケットを購入してくれる方もいます。ただ、noteで僕の立ち上げている “100円たこやき公式サポーター”のページからサポーターになってくれる人がほとんど。なので、子どもたちがたこ焼きを食べる様子を見られるわけでもない。

そのため、多くの人にとって何のリターンもないと思うのです。それでも、サポーターの方に、『(サポーターの制度を利用して)こんなにほっこりするのは、はじめて』というようなことを言っていただいたこともあります」

大阪高槻市の住宅街にある「100円たこやき」は、いい意味で価格が時代錯誤のたこ焼き屋。誰かとすれ違っても挨拶も阻まれる、何か言えば炎上や問題視される殺伐とした現代に、人と人とのかかわりについて考えさせられる店だった。<取材・文/山内良子>

100円たこやき
大阪府高槻市にある、たこ焼き4個を100円で提供する店。店内にある“たこやきチケット”を使えば、高校生以下はたこやき4個が無料になる。オーナーは、趣味の延長で「100円たこやき」を営む現役の数学教師のため、休日や営業時間はInstagramやXなどのSNSで事前にチェックしてから足を運ぶのがおすすめ。

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

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