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大量閉店の「4℃(ヨンドシー)」、「ジュエリーツツミ」と分かれた明暗。“手軽な値段”にこだわった実直さに軍配が

日刊SPA! / 2024年12月12日 8時53分

 一方、指輪は2024年3月期の販売額が前期比0.3%増の60億8000万円。2020年3月期は59億1200万円でした。このカテゴリーは60億円付近での推移が続いています。

 ネックレスはギフトの鉄板とも言えるもの。マーケティング支援などを行う株式会社LeoSophiaのクリスマスプレゼントに関する調査によると、もらって嬉しかったプレゼントのトップはネックレスで全体の26.7%。指輪は8.3%でした(「恋人へのクリスマスプレゼントに悩む人必見!もらって困ったもの・嬉しかったものを200名に調査」)。

 これは指などのサイズに関係なくプレゼントができるという手軽さが背景にあります。

 ネックレスは女性自身が自分のご褒美などとしても購入されており、特に若い世代に人気のカテゴリー。つまり、男女問わずに好まれるジュエリーなのです。

◆価格高騰が止まらない

 ツツミの最大の特徴は低価格であること。同社は創業以来、宝石の買い付け、製造、販売までを一貫して行う垂直統合システムを導入しており、適正価格で提供することを強みとしてきました。

 ヨンドシーホールディングスのアパレル事業の売上規模がまだ小さかった2019年2月期の同社の原価率は35.4%。同時期のツツミは46.8%。ヨンドシーは付加価値の高い商品、ツツミは手軽な値段の商品という特徴があります。ツツミの実直とも言えるこの競争戦略こそ、今の時代の強みとなっているのでしょう。

 実は国内のジュエリー価格は上昇しています。

 日本銀行が発表している企業物価指数によると、2020年を基準値(100)とした場合の2024年のジュエリー価格の指数は162。ジュエリー価格は2022年から急激に上昇しています。金の価格はロシアのウクライナ侵攻によって高騰し、この年に過去最高を記録しました。

 ジュエリー価格の指数は2020年より前の2018年、2019年はほとんど変わっていません。インフレの影響も相まってここ数年で価格は急上昇したのです。

◆ツツミの業績好調は必然か

 一方、消費者はジュエリーの支出を抑えている様子がわかります。総務省の家計調査によると、ジュエリーを含む身の回り用品の支出額は、2023年が1万8448円。2019年は2万592円でした。コロナ禍で支出額は1万7000円台まで下がり、その後回復しています。しかし、コロナ前の水準まで戻り切っていないのです。

 食材や電気代など生活に必要なものへの負担が重くなり、節約志向が高まっているのでしょう。

 ジュエリー価格は高騰するものの、消費額は縮小傾向……だからこそ手軽な価格での販売戦略がうまくハマったのでしょう。この3つの要素が噛み合っていると考えれば、ツツミが業績好調である現状には納得がいきます。インフレ下における成功モデルの一つと言えるかもしれません。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

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