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「KEIRINグランプリ2024」同日開催の「寺内大吉記念杯」とは。作家が冠レースとなっているワケ

日刊SPA! / 2024年12月27日 8時20分

 しかし、6レースに1回の的中とは、30レースに5回的中する確率と同じです。そのため、25レース続けて的中せず、残りの5レースで連続的中する可能性もあります。必ずしも6回目ごとに1回的中するわけではないからです。

 最悪の事態は、どれほどの資金が必要になるのでしょうか。伴の計算によれば、26レース目に必要な賭け金は「332億6675万2000円」に達します。それまでに投入した総額は「この2倍から1000円を引いた金額」として、約700億円に近い額が弾き出されました。これは当時の日本の年間国家予算に匹敵する金額です。

 さらに、1レースで300億円の売上を持つ競輪場は存在しませんので、自己資金がそのまま払い戻しに回る「タコ配当」の状態になります。この場合、数百円の配当額も得られない可能性が高く、現実的な必勝法ではありません。

 しかし、伴は解決案を思いつきます。それは、「15レース以上的中していない競輪場」を狙うというものです。この条件であれば、10レース分の「102万3000円」の資金で勝負ができると考えました。こうして、伴は決死の覚悟で勝負に挑みます。

◆予想家になった和尚の教え

 勝負は恐ろしくも好運な結果となり、伴春道は大穴を連続して的中させ、寺の再建を賄えるほどの大勝を収めることに。一方、競輪場の隣席には、伴とは裏のXから◎で勝負して全財産を失い、身を売ることまで思いつめた若い女性が座っていました。伴自身も、彼女と同じ境遇に陥っていたとしても不思議ではありません。

 その後、伴は彼女と深い仲となり、心中を迫られるという修羅場を経て、人生を見つめ直すきっかけを得ることになります。伴は寺を離れ、この女性と競輪場をさすらいながら再生の旅に出ることを決意。「正しい競輪道」を説く行脚を始めます。

「正しい競輪道を亡者どもに説いてやらねばならん。そうでもしないと、奴らはあがきのとれぬ泥沼の底へ引きずりこまれてしまうからな」

 伴は競輪を単なるギャンブルではなく、欲望や運命に向き合う場と捉えます。

「ええか。バンクを走るのは、お前らじゃないんだぞ。(中略)見ず知らずの若僧たちに大金を張るなんて、以ての外だ。競輪必勝の道はな、もっとも少ない元手で、最も大きな金……いや、これは口が滑った。欲ばらないで、分相応の配当金を頂くところにある」

 身を滅ぼしかけた僧侶がたどり着いた境地は「欲を抑え、分相応の配当を得る」でした。確かに理にかなった勝負の一つではあります。

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