1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

ヤマト運輸“サービス力低下”を招いた経営陣の誤算。現場&顧客を軽視、“120億円訴訟”日本郵便との関係は泥沼化へ

日刊SPA! / 2025年1月9日 8時53分

 ヤマト運輸は2023年9月に配送業務委託をしていた3万人との契約打ち切りを決定します。日本郵便に委託することが決まったメール便、薄型荷物の配送を委託していた個人事業主が中心。ヤマトは日本郵便との協業体制が上手く行くものと確信したのか、本格的な移行を待つ前に契約解除を決めてしまいました。

 2024年4月のクロネコDM便・クロネコゆうメールの取扱件数は前年同月比で12.9%。9割近く減少しました。こちらは順調に委託が進んでおり、予定通り日本郵便に全量の配達を委託しています。

 一方、ネコポス・クロネコゆうパケットの委託はスムーズに進みませんでした。

 クロネコゆうパケットは、ネコポスと比べると配送日がネコポスプラス1日。これはヤマト発送営業所から日本郵便の引受地域区分局に届けられ、更に配達地域区分局から郵便局、届け先と経由地が増えるためです。

 また、メルカリなどの個人間取引のサイト利用者は、クロネコゆうパケットの契約ができなくなりました。法人や個人事業主に限定されたためです。

 確かにクロネコゆうパケットはネコポスと比べると割安な部分もあります。しかし、利便性や迅速に配送できるというメリットを失いました。最も重要な顧客にとって、日本郵便と協業体制を敷いたヤマト運輸を使うメリットが少なくなったのです。これがヤマトの業務効率化を進めた経営陣の誤算でした。

◆「こねこ便420」は日本郵便への宣戦布告?

 ヤマトホールディングスは2024年12月18日、ネコポスからクロネコゆうパケットへの切り替えに伴い、配送日数が伸びていることを認めたうえで、日本郵便に対して配達委託スケジュールの見直しに係る申し入れを行い、協議を重ねていることを明らかにしました。配達委託をすべて停止することを打診したという、一連の報道を牽制しています。

 しかし、日本郵便の執行役員・五味儀裕氏はオンライン会見にて、ヤマトによる一方的な事情で誠意ある協議がなく、約束が否定されたと語っています。

 そもそも、ヤマトは2024年8月に「こねこ便420」を開始していました。これはクロネコゆうパケットの料金のわかりづらさを解消し、配送期間の短縮を目的としたものであることは明らか。協業相手である、日本郵便への宣戦布告とも言えるサービスでした。

◆日本郵便の赤字幅は拡大…

 日本郵便によるゆうメールの2024年4-9月の取扱数量は15億1500万通で前年同期間比12.4%の増加となっています。しかし、947億円もの営業損失を出しており、前年の508億円から赤字幅を広げました。日本郵便からすれば、採算性の悪いメール便を押し付けられた形になるのです。

 日本郵便は薄型荷物の配達受託をやめる準備を始めたとも報じられており、協業から競争相手へとかわる公算が高まりました。この騒動は、ヤマトホールディングスの経営陣が経営効率を重視するあまり、顧客や現場を軽視した結果だと見ることができます。

 サービス力が低下したクロネコゆうパケットは、多くの顧客を日本郵便のゆうパケットに奪われたと言われています。ヤマトは顧客と現場に向きあい、サービス力向上に努めなければならないでしょう。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください