久我美子さん死去 93歳 誤嚥性肺炎で 華族の家系からデビュー 日本映画史に残るガラス越しのキス
スポニチアネックス / 2024年6月15日 5時13分
窓ガラス越しのキスが映画史に残る名シーンとして語られる「また逢う日まで」などに出演した女優の久我美子(くが・よしこ、本名小野田美子=おのだ・はるこ)さんが9日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため死去した。93歳。東京都出身。所属事務所が14日、公表した。通夜、告別式は済ませた。木下恵介、黒澤明ら名監督から重用され、昭和の銀幕を彩った。
村上源氏の流れをくむ華族の家系。その気品ある容姿と、にじみ出る内面の美しさで映画ファンに愛された名女優が旅立った。関係者によると、晩年は施設で暮らしていた。最近まで元気だったが、誤嚥性肺炎をおこし入院。そのまま亡くなった。お別れの会などは予定していない。
最後の出演作は2000年に公開された映画「川の流れのように」で、それ以降は実質的に活動休止状態。04年3月、義姉の女優三ツ矢歌子さん(享年67)の通夜に姿を見せたくらいだった。
演技の道に進んだのは、映画・演劇好きの両親の影響と、華族制度の変化から。働くなら好きなことをしたいと、女子学習院中等科在学中の1946年に俳優オーディション「東宝ニューフェイス」に応募。4000人もの中から三船敏郎さんらとともに約50人の第1期生に選ばれた。翌47年公開の映画「四つの恋の物語」の女学生役でデビューした。
48年公開の黒澤作品「酔いどれ天使」ではセーラー服の女学生を演じ、鮮烈な印象を残した。人気を決定付けたのは今井正監督の「また逢う日まで」(50年)。久我さんが岡田英次さんと窓ガラス越しにキスをする場面は、日本映画史に残るラブシーンとして語り継がれている。
木下監督の「女の園」(54年)は転機にもなった。所属する映画会社の作品にしか出演できない「五社協定」に窮屈さを感じ、共演していた岸恵子(91)と女性だけのプロダクションを計画。有馬稲子(92)を加え、54年に「文芸プロダクションにんじんくらぶ」を設立した。
私生活では61年、俳優の平田昭彦さん(享年56)から熱烈な求愛を受けて結婚。おしどり夫婦として有名だったが、84年に先立たれた。ファンを驚かせたのは、89年「ゴジラVSビオランテ」への出演。「ゴジラ」シリーズに欠かせなかった夫の遺志を継いだもので、女性官房長官役を演じた。
久我 美子(くが・よしこ)本名小野田美子(おのだ・はるこ)1931年(昭6)1月21日生まれ、東京都出身。東宝ニューフェイス合格後、祖父の猛反対で一時、名前を変えて活動。56年に「夕やけ雲」などでブルーリボン賞助演女優賞、94年には毎日映画コンクールで田中絹代賞。69年10月から1年間、フジテレビ「3時のあなた」の司会も務めた。
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