伊藤新叡王 藤井を「泣かせた男」から「初めて負かした男」へ 21歳8カ月で戴冠 歴代8位年少記録
スポニチアネックス / 2024年6月21日 5時2分
2勝2敗のタイで迎えた叡王戦第5局は伊藤匠七段(21)が藤井聡太叡王(21)=王将含む全8冠=を破り初タイトルを獲得した。21歳8カ月での獲得は歴代8位の年少記録。同学年の藤井を3度目のタイトル戦でついに破り、独占の一角を崩した。
新たなニックネームにそぐわない、控えめな言動が印象的だった。初タイトル獲得直後の対局室。シリーズを振り返り、「タイトル戦で苦しい戦いが続いていた。一つ結果が出せたことは良かった」。昨年度の竜王戦、棋王戦に続く3度目のタイトル戦で、「藤井を泣かせた男」から「タイトル戦で藤井を初めて負かした男」へ昇格した。
小学校3年時の対局で勝利を収めた際、藤井を号泣させたエピソードは有名だ。だが、プロ入りは藤井の2016年から4年後の20年。18年に藤井が朝日杯で棋戦初優勝を飾った対局では記録係を務めていた。
昨年度竜王戦では4連敗。棋王戦では第1局こそ後手番から持将棋指し直しへ持ち込んで先手番を得たが、3連敗。通算11敗1持将棋を要して、今期第2局で対藤井戦初勝利を挙げた。
この日の将棋もどこか似ていた。「途中、こちらだけが終盤戦。自信のない展開だったが辛抱強く指すことができた」。中盤、穴熊に奥深く収まった藤井王に対し、自王は三段目、四段目を遊泳し、決め手を与えない戦いに終始した。そして100手目△5二銀(A図)の好手から形勢をひっくり返した。歴代8位、21歳8カ月での初タイトルをつかんだ。
藤井に一矢報いた感慨を問われても、「これからもタイトル戦で戦えるようになればうれしい」と答えるにとどめた。来期叡王戦は王者として5番勝負から出場するが、5番勝負の最中にある棋聖戦以降のタイトル戦はすでに挑戦者争いから脱落。直近で挑戦の可能性を残すのが、例年2月から5番勝負が始まる棋王戦。一矢は報いても、まだ道半ばと知っていた。(筒崎 嘉一)
◇伊藤 匠(いとう・たくみ)2002年(平14)10月10日生まれ、東京都出身の21歳。宮田利男八段門下。5歳の時、父雅浩さんに教わり将棋を始める。小5で奨励会入会。18年4月から三段リーグ参戦。得意戦法は相掛かり。趣味は野球観戦で中日ファン。
▼日本将棋連盟・羽生善治会長 伊藤匠七段、叡王獲得、誠におめでとうございます。タイトル戦3回目の挑戦での戴冠は、喜びも大きいと思います。今回の5番勝負は、最先端の将棋の魅力が余すことなく表現されたシリーズだと感じました。今後も藤井竜王・名人と、しのぎを削る勝負を末永く繰り広げられることを期待しています。
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