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【内田雅也の追球】「プラスアルファ」の勝利

スポニチアネックス / 2024年6月22日 8時2分

<神・D>DeNAにサヨナラ勝利し、スタンドにあいさつする岡田監督(中央)(撮影・後藤 大輝)

 ◇セ・リーグ 阪神1-0DeNA(2024年6月21日 甲子園)

 阪神はいわゆる「X勝ち」だった。サヨナラ勝利の時、9回裏や延長回の得点欄に「1X」などXが付いた数字が入る。

 このX表記は、なお攻撃が続いていれば、さらに得点が入る可能性があるという意味である。日本で昭和30年代に広まった。スポニチが採用したのは1956(昭和31)年だと評論家・大井広介がコラムで書いていた。

 それまでは「A」がよく使われた。プラスアルファの「〓」の意味だ。枠をはみ出すが「1A」や、文字通り「1+〓」と表記していた。

 夏の甲子園大会での中京商―明石中の延長25回の激闘(1933年)でもラジオ中継のNHKアナウンサーが「1アルファ対0」と叫んでいる。

 さて、阪神は交流戦最後の日本ハム戦(18日)が2X―1、この夜が1X―0。足かけ4日の2試合連続サヨナラである。

 監督・岡田彰布は前回監督当時、3試合連続サヨナラ勝ちを経験している。2008年9月9~11日のヤクルト戦(甲子園)である。首位に立ち、優勝へのマジックナンバーも点灯していた。

 だが、劇的な3夜連続のサヨナラに「危ない」と感じた。打線が低調で初回と9回にしか点が入らなかった。サヨナラでしか勝てないのは危険信号と感じとった。予感は的中し、逆転で巨人に優勝をさらわれた。結果オーライを嫌うのだ。

 そんな岡田がこの夜は「そりゃあ、勝ち負けは大きいよ」と結果的な勝利を素直に認めた。

 打てない、点が入らないのは相変わらずだが、とにかく勝った。この結果が大きい。まだ順位やゲーム差をうんぬんする時期ではないが、広島も巨人も敗れている。

 大山悠輔も16日ぶりに1軍復帰し4番で2安打した。ともに1ボール―2ストライクと追い込まれてからの速球を打ち、ゴロが内野手の間を抜ける安打だった。

 評論家時代、岡田は打者を見て、結果より内容を評価した。ただ、この夜は打ち方はどうあれ、結果が出た点を評価した。「気分的に楽になるんちゃうか」と話した。

 近畿地方はようやく梅雨入りしたのだが、浜風はさわやかだった。野球を愛した正岡子規が<六月を奇麗な風の吹くことよ>と詠んでいる。そんな風が心地よかった。

 昔風の表記のように、さらにチームの上積み、プラスアルファが望める勝利だった。 =敬称略= (編集委員)

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