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宮川大助・花子(2)病気になって自覚した「私は漫才師」 大助に「この世界へ誘ってくれてありがとう」

スポニチアネックス / 2024年6月24日 16時2分

夫婦の介護生活をつづった「なにわ介護男子」を出版した宮川大助・花子

【宮川大助・花子インタビュー(2)】

◆舞台でもらうファンからの声援 何よりの良薬◆

 ―2年前に「あわてず、あせらず、あきらめず」という闘病記を出されました。今回驚いたのは、普通、こういう本は深刻になりがちなのに、いろんなところに笑いが散りばめているんですよね。これって同じように病気と闘っている人にとても光を差されているのではと思いました。

 大助「これはね、マネジャーのヒットなんです」

 ―そうなんですか。

 大助「マンガチックにイラストを入れたりして、そういうものにして楽しく笑顔で見られるように、と言ってくれて」

 花子「まあ、普段からいらんことばっかり言ってますから(笑い)。体はあれやけど、口だけは達者やから。そんなところをありのままに感じてもらえたら、とは思ってます。でも、ほんま病気は大変やからね。体もそやけど、頭もはげたり、大変です。私もはげたんです。治療で目の横くらいからずーっ耳のあたりまで放射線当てて」

 大助「芝刈りみたいにきれいに刈られて」

 花子「ツーブロックみたいになってましたわ(笑い)」

 大助「でも、ほんとにがんになると大変。嫁の場合は神経もやられたので、腰から足にかけてきてしまって。生活していくうえで、仕事しないと生きていけない仕組みになってるじゃないですか。だから、それがやっぱりぼくらの生活ではつらいですよね。嫁の生命保険も解約して、今は娘の貯金で生活してる。お父さん、これなくなったらお父さんの生命保険解約やからなって」

 ―そんな中で、やはりファンの方々の声援は励みになるんですね。

 大助「今はSNSもいっぱいあるじゃないですか。そこで、勇気もらいましたとか、私も頑張ります!という人がたくさんいらっしゃるので、ぼくらも元気もらってます。本当は僕が先に逝くのが目標やったんやけど」

 花子「目標は達成してや」

 大助「ぼくが先にいったら、おまえと娘でハワイ旅行にでも行ってくれって言ってたんです。ほんでハワイでお父さん来たよーって言ってくれたら、ハワイの沖からニコッと笑うからって」

 花子「そんなん忘れて、帰ってきてから、そうや、お父さんの保険で来たのに…言うて笑ってたと思うわ」

 ―(笑い)

 花子「私も口は元気なんで、この前は笑い飯の哲夫くんとしゃべってて、上方漫才大賞とった時に“とったん?いやー信じられへんわ”と言うたら、“師匠、おめでとうとかあるでしょ?”って言われて。“いや、世間は認めても私は絶対まだ認めへん”言うてね。あ、質問どうぞ、どうぞ」

 ―(笑い)いや、もう何を質問しようか忘れてしまいました。

 花子「あ、今はね、第3弾も考えてますねん。1発目は全然病気のこと知らんと書いて、今回のは出してからまた入院してますやん。病気のこともより一層わかったから」

◆完治はしない ならば目の前の状況と闘っていくだけ◆

 ―とても感銘したのは、完治を目指すのではなくて、病気と付き合いながら闘っていくんだという考え方でした。

 花子「ハナから完治しないということがわかったから。それやったら闘っていこうと思ったんです。また闘うチャンスももらえたんですよね。家族も支えてくれてるし、大助くんも介護してくれるだけやなくて神社やお寺にお参りにいってくれてね。まんじゅう買ってきてくれるんですけど。でも、途中でまんじゅう食べたなって、開けて、落として、そんなんはいらんねんけど」

 ―落語みたいな話ですね(笑い)

 大助「でも、うちの場合はにぎやかなのもいいのかもしれませんね。嫁のお姉さんは元看護師なのでよく来てくれるし、マネジャーも定期的に来るし、こうやって取材にも来ていただける。介護士の人によると、家に1人しかいない人はどうしても精神的に滅入る、みたいなことは言ってました。そういう意味では嫁は恵まれてるのかもしれんね。

 ―しかし、これほどそばで介護されているというのは尊敬でしかないです。

 大助「それはね、やっぱり神さんの前で彼女を一生愛します、と誓った。それがいまだに生きてるんです。それと親にも、“芸能界はいろいろあると思うけど、もし漫才や仕事が原因で離婚するようなことがあるんやったら、漫才をやめて夫婦仲良く暮らしてほしい”、と言われたんです。それでも、稽古でケンカしたり、いろいろありました。だから嫁はある時点から、私は漫才師じゃなくて家庭での母親のほうに比重を置きたいと言ってました。でも、今回ひっくり返って、舞台に出たい気持ちと、舞台で待ってくれたはるお客さんの声援を受けて、私は漫才師なんや、と思った。私を漫才の世界に誘ってくれてありがとう、と言ってくれたんです。それだけ年数がかかって、ここまでたどり着いたんですよね」

 花子「みんなが芸人と言ってくれているんですが、自分ではそんな感覚はなかったんです、嫁という感覚やったから、その私が芸人という形で、こうやって取材してもらうようになりました。このまえ娘に言われたのが、“お母さんはがんで死ぬとわかってるからいいやん、普通の人は交通事故なんか、病気なのかわからんけど、お母さんはわかってるから、それまでの猶予が楽しめるやん”、と言われてね。加えて自分がすごく幸せやと思ったのは、こんな病気になっても舞台やりましょか?本書きましょか?とか言ってもらえるチャンスがある。本なんかも病人の戯言やんか。それでも読んでいただいて、こんな幸せなことはないですわ」

 大助「好きで一緒になって、惚れて惚れて一緒になったんやから、便を取るのも夫婦やからね。最近は手袋するのも面倒やなと思ったりもするけど」

 花子「それはやめといて。ばい菌入るやんか」

 ―(笑い)

 大助「便とか何ともなくて、それより嫁はんがおらんようになることを考えたら寂しくてたまりませんもん。しかし、おれがこれだけ好きで一緒になったんや、ゆうてんのに、あんたはひと言もないんか?」

 花子「そんなんはええねん。そんなんゆうてもおもろないやん。ああそうか、てなもんや」

 大助「しかし、もし逆におれが倒れてたら介護も大変やったと思うで」

 花子「いや、私は介護せんと仕事行くわ。そういえば、大助くんが入院したときは、私ら旅行に行ってたなあ」

 大助「手術して大変な思いしてたのに、家族はけえへんし、おかんもけえへんから、弟子に聞いてみたら、花子師匠はハワイに行ってますって。ええかげんにせえ!ですわ。しかもはよ退院してや、病院代もけっこうかかるんやでって。あんたらのハワイ代やろ!!と突っ込んでおきました」

 【取材を終えて】インタビューが終わって庭を見せていただいた。「腰が悪いから畑とかもできなくて」と笑う大助さん。ただ、小さくてもとてもきれいに整えられているのが印象的で、それを伝えると「ここからの景色を嫁はんが好きなんです。だから枝とかがビヨーンと伸びてたらジャマやしね」と、花子さんの心を少しでも乱さないように気をつけているのだという。

 それにしても、これほど真っ直ぐに、照れることもなく、そばにいる妻への愛を語る夫を見たことがない。欧米人の文化的儀礼としての愛情表現ではなく、心の底からの感情。だけど、それに少し照れ隠しする花子さんがまたかわいらしい。

 取り巻く状況は決して楽ではない。でも、この素敵な夫婦にもう少し穏やかな時間が訪れたら、と願わずにはいられなかった。(江良 真)

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