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【内田雅也の追球】明暗の「苦境」での1球

スポニチアネックス / 2024年6月30日 8時2分

<ヤ・神>初回1死三塁、伊藤将(左)はフルカウントからサンタナに右犠飛を打たれる(撮影・須田 麻祐子)

 ◇セ・リーグ 阪神1-6ヤクルト(2024年6月29日 神宮)

 阪神が苦しんだヤクルト先発の奥川恭伸はいわゆる「フルハウス」投球だった。ポーカーでスリーカードとワンペア、同じ数字の3枚と2枚でできる役だ。俗に野球での3ボール2ストライクのフルカウントを言う。

 ほめられた投球ではない。アメリカの野球記者たちは、それほど苦しい投球という意味で使う。

 奥川は立ち上がりからこのフルハウスが続いていた。1回表の森下翔太から2回表の坂本誠志郎まで実に5者連続でフルカウントだった。相当に苦しんでいるように感じたのはフルハウス連発の投球だったからだ。

 そんな奥川を阪神打線はとらえ切れなかった。2回表はフルハウスから四球―凡ゴロ―四球―凡飛で2死一、二塁となり右飛で無得点だった。さらに5回表2死一塁での島田海吏もフルハウスから四球だった。

 フルハウス6人で3四球は得たが、3打数無安打。結局、5回でわずか2安打1点、勝利投手にさせてしまった。

 時折、捕手の中村悠平が中腰で構えるなど、高め(ボール球を含む)への対応に苦しんだ。奥川にはフライアウト8(ゴロアウト6)と凡飛が目立った。

 反対に阪神先発の伊藤将司はフルハウスでやられた。1回裏先頭はフルハウスから四球。短長打と内野ゴロで2点を失った後、フルハウスから右犠飛をあげられ3点目を失った。3回裏1死一、二塁では村上宗隆にフルハウスから右前打されて満塁。直後に連続適時打を浴びて降板となった。

 もちろん村上を迎える直前、1死一塁からの二ゴロは併殺コースだったが、二塁へのトスを小幡竜平が落球(失策)したのは痛かった。

 昔はよく、フルハウス(フルカウント)になると、実況アナウンサーが「ピッチャー、バッター、ともにイン・ザ・ホール」と言った。最近は聞かなくなった。

 ホールは穴で、転じて苦境や窮地を意味する。投手、打者ともにもう後がないというわけだ。阪神は苦境での1球で投打とも明暗を描いていた。

 シーズン143試合の中間点72試合目だった。きょう30日で1年の半分が終わる。「六月三十日(みそか)は年のへそ」という。昔の日本人は凶作や疫病、不吉なことがあった時は半年が過ぎると、正月を祝って新しい年を迎えようとした。阪神もいま、そんな気分だろう。 =敬称略= (編集委員)

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