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【内田雅也の追球】どんな負け方でも、1敗は1敗でしかない 芽生えた不信をぬぐい去り、一丸姿勢を

スポニチアネックス / 2024年7月1日 8時2分

雨の中、声援を送る阪神ファン

 ◇セ・リーグ 阪神5ー6ヤクルト(2024年6月30日 神宮)

 神宮の杜(もり)が鳴いていた。いや、泣いていたのかもしれない。

 ビュービューと強風が吹き抜け、雨が舞っていた。球場周辺の木々がザーザーと音を立てた。

 阪神は悪夢の敗戦だった。4点リードの8回裏2死一、二塁、「あと1死」から大量5点を失っての逆転負けだった。

 敗戦後、私服に着替えた監督・岡田彰布は「準備の問題よ」と吐き捨てるように言った。投手コーチには事前に8回桐敷拓馬、9回ハビー・ゲラと伝えていた。だが思惑が外れた時の「準備」ができていなかった。マイナス思考と認め、常に最悪を想定する岡田には「出し惜しみ」の敗戦は「一番悔しい」。

 9回表2死、同点走者の本塁憤死も回した三塁コーチに「びっくりしたわ」。監督のコーチ不信と批判が噴出し、相互信頼も案じる状況にある。

 岡田は「今日の負けは大きい。1つの負けですまん」とまで言った。尾を引くというのだ。

 野球記者も「シーズンの行方を左右する試合」と書く。ただ、大リーグ歴代2位、監督通算2902勝のトニー・ラルーサは、そんな試合は本当にあるのかと懐疑的だ。

 ホワイトソックス監督時代、9回2死から追いつき、延長で勝ち越したが逆転サヨナラ負けを喫した。「あの試合で優勝を逃した」と言われた。

 「ばか言っちゃいけない。がっくりは野球には付き物だ。問題はその後だ」。ジョージ・F・ウィル『野球術』(文春文庫)にある。「あの試合の後、もうだめだという落ち込んだ雰囲気が漂った。(問題は)その負けを引きずって、さらに2、3試合落としてしまうことだ。その方が百万倍もひどい。真に恐れるべきはそれなんだ」

 監督として史上初めてア、ナ両リーグでワールドシリーズを制したスパーキー・アンダーソンも同じことを言う。著書『スパーキー!』(NTT出版)にある。<一つの勝利がシーズン全体にわたってチームに影響することはありえない。同じように一つの敗北がチームを1年間だめにしてしまうこともない>。

 どんなに感動的な(または悪夢的な)試合も1勝は1勝、1敗は1敗でしかない。ペナントレースは「一寸先は闇」で誰にも行方はわからない。

 いまの阪神に必要なのは芽生えた不信をぬぐい去り、もう一度、一丸となることだ。正念場には違いない。 =敬称略=

 (編集委員)

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