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帝京 13年ぶり甲子園へ――低反発金属バットも関係なし 2部制打撃練習で強打磨く

スポニチアネックス / 2024年7月4日 5時1分

帝京打線を引っ張る“最強三銃士”の(左から)奈良、西崎、富浜(撮影・村井 樹)

 今夏に11年以来、13年ぶりの甲子園出場を狙う帝京(東京)。選抜大会から低反発の金属バットに完全移行して飛距離減に苦しむチームが多い中、今春は都大会1回戦から敗れた関東大会準決勝までの公式戦全10試合で本塁打を記録し、高校野球界に衝撃を与えた。なぜ驚異的なペースで一発を量産できるのか。その秘密に迫った。(取材・構成 村井 樹)

 今春の関東大会準決勝。帝京と戦った白鴎大足利(栃木)は目を疑うような守備シフトを敷いた。走者がいない場合、外野手の守備位置は外野フェンスの手前。両翼99・1メートルながら中堅122メートルと比較的広い上毛新聞敷島球場で、だ。使用バットは今春選抜から完全移行した低反発の金属バット。帝京打線が“規格外”であることを如実に物語っていた。

 昨秋、帝京は1次予選で強豪・二松学舎大付に敗れ、都大会出場を逃していた。選抜出場も絶望的となり、夏を見据えて都内の同校敷地内にある練習場で新基準のバットを用いて練習を始めたが、金田優哉監督は「伝統の強打は失いたくなかった。このバットでも打ち勝つ野球を目指した」と言う。飛ばないバットでも相手よりも多くの得点を奪って勝つ。伝統を継続するための挑戦が始まった。

 まず練習方法を一新した。「野球の試合で横から投げるボールはない。打撃練習では常に実戦を意識させるようにした」とティー打撃などで一般的な横からのトスを廃止。そして「自分のスイングをつくるための練習」と「より実戦に近い内容の練習」の“2部制”のメニューを作成した。

 最初に行うのが、投本間の半分の距離からの手投げの緩い球を打ち返す練習。各選手が力を一番伝えられるポイントまでボールを呼び込み、思いきり引っ張る。常に全力で振ることを徹底。プロ注目の西崎桔平主将(3年)が「これは10球、20球と続けることは無理ですね」と明かしたように、3~5球ほどでの交代を繰り返し、約30分かけて自分のスイングを見つめる。その後は約15メートルの距離から打撃投手が変化球も交えながら全力投球で抑えにいく実戦向けの練習へ移行。このパターンを昨オフから毎日のように繰り返した。今春公式戦でチーム最多の5本塁打を放った大砲・奈良飛雄馬(3年)は「全員、バットが替わったとは思わないほど飛ぶようになっている」と夏への手応えを語る。

 強力打線の中でも、金田監督が「最強三銃士」と名付けたのが投打二刀流の西崎、体重104キロで最重量の奈良に加え、今春都大会決勝でサヨナラ3ランを放つなど勝負強さがチーム随一である富浜琉心(3年)だ。西崎、奈良の後を打つことの多い富浜は「どこからでもホームランが打てることこそ、今のチームの強みです」と胸を張る。

 金田監督が試合や練習でつらい局面になった際、選手にかけ続ける言葉がある。「現状維持は退化。毎日、自分のマックスに挑戦しろ」。現状に満足する選手は誰ひとりいない。今夏の名門復活へ――。準備は着々と進む。

 ▽低反発の金属バット 投手へのライナーなど事故防止を目的に導入。最大径が3ミリ細い64ミリ未満に、打球部の素材の厚さは約3ミリから約4ミリ以上になり「飛ばないバット」として注目される。完全移行となった今春選抜では外野の頭を越える打球はほとんどなく、極端に前進守備を敷くチームも。全31試合で本塁打も3本(柵越え2本)で金属バットが解禁された75年以降では最少だった。

 ≪表西 デッドリフト240キロ「日々の成果です」≫不動の1番・表西(おもにし)優志(3年)は驚異的なパワーを誇る。腕を下に伸ばした状態でバーベルを腰の下まで持ち上げるデッドリフトのMAXは240キロ。使用している器具は違うが93キロ級の高校生の現在の日本記録が257・5キロで、体重84キロの表西は「日々の成果です」と胸を張る。ウエートトレーニングは前田監督時代から重要視しており、金田監督も「野球はパワーのスポーツ。トレーニングはとても重要」と語った。

 ≪金田監督 指導者育成も尽力≫金田監督は昨秋に大きな決断を下した。春の都大会を制し優勝候補で臨んだ夏は5回戦敗退。選抜へとつながる秋は都大会出場を逃し「このままではダメ」と危機感を募らせた。練習方法を見直すだけではなく、チーム全体を広く見るため打撃練習は3年目の24歳・細田悠貴コーチが担い、メンバー以外の練習を帝京の後輩でもある32歳の佐藤秀栄コーチに任せた。未来のため、後輩の指導者の育成も見据える39歳の指揮官は「3人しかいないが、しっかりとやれていると思います」と手応えをにじませた。

 【後記】練習場の一塁側ベンチの横には過去の甲子園での戦績を記した石碑とともに長さ約30センチのパイプの切れ端も飾られている。グラウンドに現れた選手はこの場で深々と一礼する。

 17年に全面人工芝の専用球場が完成。その際、何十年と使用してきた打撃ケージは老朽化が激しく、新しい物に買い替えた。当時はコーチだった金田監督は「前田監督(現名誉監督)に“これは何十年と使ってきたケージだ。ここへ飾っておけ”と言われて。自分も使っていたケージ。受け継いでいかないといけない伝統もありますよね」と述懐する。

 50年もの時間をかけ、前田名誉監督がつくり上げた伝統の強打。その思いは、しっかりと選手に受け継がれている。(アマチュア野球担当・村井 樹)

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