相洋13安打15得点 野球部OBでパラ代表・鳥居先輩に白星届ける5回コールド発進

＜相洋・岸根＞鳥居の2年後輩で中学時代も同じチームに所属した二宮（右）と、先発して3回無失点に抑えた中島拓

　◇第106回全国高校野球選手権神奈川大会1回戦　相洋15－0岸根（2024年7月7日　サーティーフォー相模原）

　第106回全国高校野球選手権（8月7日開幕、甲子園）の出場校を決める地方大会は7日、27大会で270試合（継続試合を含む）が行われた。首都圏が本格開幕し、神奈川では昨夏8強の相洋が岸根との1回戦で15―0の5回コールド発進。野球部OBでゴールボール日本代表としてパリ・パラリンピックに出場する鳥居陽生（19）に勇気をもらい、春夏通じて初の甲子園出場を狙う。

　パリへ旅立つ先輩に、後輩が一足先に吉報を届けた。相洋が13安打、毎回の15得点で5回コールド発進。高橋伸明監督は「ウチのチームは秋、春と勝てなかったけど、全員がいい動きをしていました」と目を細めた。

　野球を断念したOBの思いを背負っている。昨年、同校を卒業した鳥居陽生。小田原足柄リトルシニアでの投手経験を買われて入学し、甲子園を目指して白球を追い続けたが半年後、捕手のサインが見えづらくなった。大学病院での精密検査で視力が次第に低下していくレーベル遺伝性視神経症（レーベル病）と宣告された。

　一時は絶望した。だが、天は見放さない。野球と同じチーム競技の障がい者スポーツ「ゴールボール」の存在を知り、夢中になった。視力は低下しても気力を取り戻したため退部はせず、ウエートトレーニングの合間に他部員の助言を行った。昨年、日本ゴールボール協会の強化指定選手となり、今年6月、パリ・パラリンピックの日本代表に選出された。

　高橋監督は鳥居の吉報を選手に伝えた。「ミーティングで“こういう先輩がいるだけで誇りだね”と話した。鳥居の苦しむ姿を知っている子（現3年生）もいるので集中していました」。同じ小田原足柄リトルシニアに所属していた3番・二宮陽斗（3年）は無安打ながら2回に中犠飛を放って勝利に貢献。「ヒットは2回戦に取っておきます」と笑い、鳥居については「明るい先輩で関わりやすかった」。闘病中は話せなかったが「次の夢に向かっている」と聞いて、安心したという。

　先発で3回1安打無失点に抑えた背番号3の中島拓人（2年）は鳥居と入れ替わりで対面はしていないが「打たせて取る投球ができた」と胸を張った。

　昨夏は準々決勝で横浜に敗退。今大会は世界へ挑む鳥居を勇気づけるためにも熱い夏にする。（伊藤　幸男）

　≪ゴールボール・鳥居「たくましくなった姿が目に浮かぶ」≫初戦突破、おめでとうございます。昨秋、今春季大会の雪辱を果たすべく、勢いのある試合となり、大変うれしく思っています。私が高校3年時に現3年生が入学。既に視力が低下しグラウンドから外れトレーニングに励んでいた頃、初々しく真っすぐな気持ちでトレーニングに加わってきた姿を思い出します。今思えば野球ができなくなり、甲子園出場の夢を託す思いで相洋のトレーニング方法を伝えていたのかもしれません。あれから2年、たくましくなった姿が目に浮かびます。皆さんの頑張りに刺激をもらい、私もパリ・パラリンピックに向け、一球一球に全力を注ぎます。ともに頑張りましょう！（ゴールボール日本代表）

　▽ゴールボール　視覚障がい者を対象に考えられた球技でパラリンピック特有の種目。1チーム3選手が鈴の入ったボールを転がすように投げ合い、味方ゴールを守りつつ相手ゴールにボールを入れて得点を競う。守備側がボールに触れてから10秒以内にセンターラインを越えなければ反則となる。ボールを投げた後、攻撃側は守備側に不利になるような音を出してもいけない。

　≪1年生躍動！末野5打点≫1年生パワーが初戦突破の原動力となった。背番号18の末野洸之介が1番に抜てきされ、2回に左翼戦2点三塁打、3回にも右越え3点三塁打と計5打点。「緊張はしたけど、ベンチ入りしていない先輩の分もやらなきゃと必死でした」。4回には末野と交代した渡辺優里斗が右越え三塁打。川瀬夏一も3番手で2/3回を無失点に抑え、高橋監督は「上級生は強い思いを持っているけど、フレッシュにできる選手を使いたかった」と話した。