長髪軍団に一人丸刈り！慶応の“一休さん”3安打 2年生・酒井一玖が連覇へ打線けん引

＜慶応・横須賀学院＞初戦をコールド勝ちで突破した酒井（左から4人目）ら慶応ナイン（撮影・村井　樹）

　◇第106回全国高校野球選手権神奈川大会2回戦　慶応14－3横須賀学院（2024年7月11日　サーティーフォー相模原）

　2年連続で夏の甲子園大会優勝を目指す慶応（神奈川）が11日、横須賀学院との初戦に7回コールド勝ちして好スタートを切った。「2番・二塁」の酒井一玖（いっきゅう）内野手（2年）が、3安打2打点1盗塁で強力打線をけん引。爽やかな長髪軍団にあって、チームでただ一人こだわりの丸刈りを貫く令和の「一休さん」が、一級品のプレーで「昭和の風」を吹かせる。

　ポック、ポック、ポック…チーン！！丸刈りで、くりくりお目々が可愛い酒井はひらめいた。相手先発は1回戦に登板のなかったエース右腕。データがなく初回は緩いカーブに空振り三振を喫したが、慌てない慌てない、一休み一休み。考えること20分。3回は変化球に手を出さず、狙い通りに直球を捉え右前打した。

　「最初は緊張したけど、自分で考えて死に物狂いでいきました」

　名前は一玖。大人気アニメ「一休さん」の主人公と同じ読み方で、チームメートから「いっきゅう」の愛称で親しまれる。もちろん、度胸も満点だ。4回にも一塁内野安打で出塁すると、次打者の5球目に盗塁成功。「足は速くないんですけどね」と照れたが、相手失策の間に8点目のホームを踏んだ。

　慶応は昨夏、自由な髪形で選手主体に考える「エンジョイ・ベースボール」を掲げて107年ぶりの日本一に輝いた。爽やかに甲子園を駆け回る姿は“慶応旋風”として社会現象にもなったが、酒井は言う。「高校野球は丸刈りが格好いいと思っているので」。野球を始めた小2から、甲子園は好き好き好き好き好きっ好き。大会期間中は、丸刈りにしてテレビ観戦するほどだ。上一色中時代も丸刈りでプレーし、3年時には日本一も経験した。「中学も自分たちが主体的にやっていたので、自分で考える野球がいいなと思って」と、慶応へ進んだ。

　周りがサラサラヘアをなびかせても、気にしない気にしない。「いろいろな髪形の人がいるのもいいが、自分は丸刈りがいい」。100人以上の部員の中でただ一人、髪形を貫く。前日には髪を2ミリの長さに刈って勝負の夏に挑み、5回の右前適時打を含む3安打2打点と一級品の活躍。森林貴彦監督は「うちで唯一の存在なので頭だけでなくどんどん輝いて」ととんちならぬ、しゃれを利かせた。

　慶応の一休さんは昨夏、アルプススタンドから日本一を後押ししたが「偉大な先輩たちに続けるよう、もっとレベルアップしたい」と頼もしい。望みは高く果てしなく。再び「KEIO日本一」へ挑戦する熱い夏が始まった。（村井　樹）

　◇酒井　一玖（さかい・いっきゅう）2007年（平19）9月1日生まれ、千葉県出身の16歳。小2から豊上ジュニアーズで野球を始め、6年時にはロッテジュニア入り。上一色中では軟式野球部に所属。慶応では1年秋からベンチ入り。好きな選手は巨人・阿部慎之助（現監督）。50メートル走6秒5。1メートル74、78キロ。右投げ左打ち。

　▽一休さん　室町時代に生きた臨済宗の僧・一休宗純の幼少期をモチーフにしたテレビアニメ。1975～82年に放送され、安国寺の小僧「一休さん」がさまざまな難題やトラブル、意地悪を「とんち」と「知恵」で解決。最高視聴率は関東地区で27・2％、関西地区で42％を記録した。「慌てない慌てない、一休み一休み」の名フレーズも誕生。

　▽昨夏の慶応　神奈川大会決勝では横浜との激闘を6―5で制して春夏連続の甲子園出場。甲子園大会では3回戦で広陵（広島）を延長10回タイブレークの末に破るなど、自慢の打線が力を発揮し決勝進出。決勝は選抜2回戦で敗れ、夏の甲子園連覇を目指した仙台育英（宮城）と対戦。丸田が夏の決勝では初となる初回表に先頭打者本塁打を放ち、8―2で勝利。107年ぶりの日本一に輝いた。