【鷹論】“鷹の恋人”福岡大大濠・柴田獅子 “快音”の次は豪快アーチを
スポニチアネックス / 2024年7月16日 5時33分
記者はしばらく卒業させられているが、この季節だけはお呼びがかかる。夏の高校野球選手権予選が、真っ盛り。もう、何日も駆り出されたが、12日、久留米球場。忘れていた“快音”を聞いた。
音の“発生源”は福岡大大濠の背番号1。6日の3回戦で今夏初登板した際には、10球団20人以上のスカウトが小郡球場のネット裏に集結した149キロ右腕・柴田獅子(れお、3年)だ。地元ソフトバンクは8人を送り込んでいた。実は高校通算18本塁打の打者としても耳目を集める存在。右翼ポール際、わずかにファウルだったが、凄い打球だった。
なぜ、忘れていたか。それはこの夏、まだ一本もホームランを見ていないからだ。今季から“飛ばないバット”が導入され勢力図は大きく変わった。自由ケ丘には木製バットを使う選手が3人もいた。「(フライを)上げると失速する」というのが理由だそうだ。
“飛ばない――”が導入されたという公式発表のない24年プロ野球。本塁打争いはシーズンの半分を過ぎたが、両リーグとも低空飛行で30本塁打に届くかどうか。パは昨季も26本でタイトルを分け合ったが、セでは1961年の長嶋茂雄(28本)以来63年ぶりの“危機”でもある。
ただ、それ自体には“寂しい”とかの感情は不思議とない。高校野球で今夏、柵越えを見ていなかったことを忘れていたくらいだ。“紙一重”より、もっと薄い接戦もまた、野球の醍醐味(だいごみ)だからだ。延長タイブレーク、両チームの心理戦の末、勝者と敗者が決まった試合で「こういうのが高校野球なんだよぉ」「そうだよな。本当、面白いよ」。試合後トイレで横に並んだおじさん2人が、うれしそうに交わしていた言葉に妙に共感する。
だからといって「ホームラン不要論」では決してない。たまに見ると感動も増幅する。“飛ばない”と言われている今季のプロ野球だが、個人的には接戦が多いのが好みだ。願わくばこの夏“鷹の恋人”柴田のアーチの方もこの目で見たい。
(福浦 健太郎)
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