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【内田雅也の追球】「タフ」と「覚悟」の敗戦

スポニチアネックス / 2024年7月17日 8時2分

<巨・神>2回、小幡の左前打で生還する大山(撮影・西川祐介)

 ◇セ・リーグ 阪神1-2巨人(2024年7月16日 東京D)

 今も大リーグ記録として残るジョー・ディマジオ(ヤンキース)の56試合連続安打が達成された日だった。1941年7月16日である。

 映画『さらば愛(いと)しき女(ひと)よ』で私立探偵の主人公フィリップ・マーロウは日々、ディマジオが安打を打ったかどうかを気にかけている。ラストには「平凡な投手によって、あっけなく食い止められた」と記録ストップの新聞記事が印象的に出てくる。

 マーロウには名セリフが多い。原作のレイモンド・チャンドラーの小説に出てくる。たとえば、「タフでなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」がある。

 この夜の阪神・才木浩人である。立ち上がりに苦しみながら、初回のピンチに38球を費やして2点でとどめた。2回以降も無失点でしのいだ。

 同い年、同じ兵庫県の公立高校出身の巨人・山崎伊織との投げ合い。相手より長くマウンドに立ち続け、最後まで投げきった。投球数133は今季最多だった。

 「タフ」なのだ。体力はもちろん、厳しい心を持っている。そして「優しい」のだろう。

 2001年、ワールドシリーズMVPとなったランディ・ジョンソン(当時ダイヤモンドバックス)から聞いた。「昔は怒りが力の源だった。何くそ、今に見ていろという気持ちだった。今は怒りより強い力を知っている。それは優しさだ」

 才木は火曜日登板となってから過去3試合、援護点がなかった。2回表の1点は6月16日の前川右京満塁弾以来1カ月ぶりの援護点だった。それでも心乱さずにいるのは強い「優しさ」である。

 こんな立ち居振る舞いの投手を敗戦投手にしてはならない。打線は9安打を放ったが、回の先頭が出たのは3回表だけ。4~8回表はすべて2死から単打が出た。

 監督・岡田彰布は「全く走らん」と嘆いた。盗塁のサインを出しているのに誰も走らなかった。スタートのそぶりもなかった。2死一塁は盗塁のケースである。

 マーロウのセリフに「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ」がある。盗塁には憤死する覚悟がいる。ただ岡田は「セーフになれとは言うてない。走れと言うてるんや」と失敗の責任は問わない。ならば、あと少しの勇気で道が開けるかもしれない。 =敬称略= (編集委員)

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