【内田雅也の追球】垣間見たカンフル効果
スポニチアネックス / 2024年7月18日 8時2分
◇セ・リーグ 阪神3-4巨人(2024年7月17日 東京D)
野球は何が起きるかわからない。奇跡の瞬間もあれば、とんでもない災難もある。<野球にはどんなことも起こりうる>とロジャー・エンジェルが『憧れの大リーガーたち』で書いている。
<最も突拍子もないアクシデントは最も弱いチームに起こるのが、ほとんど原則といってもいい>。この「最も弱いチーム」は今の阪神ではない、と信じている。
「とんでもないことが起きてるんやで」と敗戦後、阪神監督・岡田彰布はこちらを見た。「わかるか?」という目だ。「言われへんけどな……。サインも見てないし……」。ベンチ―三塁コーチ―選手のどこかで伝達ミスがあったようだ。
1点を追う6回表1死一塁、打者・坂本誠志郎でヒットエンドランを仕掛けた。巨人バッテリーに外角遠く外された。坂本は当てにいったが空振りで三振、一塁走者・大山悠輔盗塁死で併殺となった。岡田は「エンドランのハーフスイングなんて初めて見たわ」とぼやいた。食らいつく姿勢が足らんというわけだ。坂本出身の明大で言えば、「御大」島岡吉郎の「何とかせえ!」である。
9回表も1死一塁で再び坂本。強打した打球は最悪の三ゴロ併殺となって万事休した。
スタメンから近本光司、中野拓夢の1、2番を外して臨んだ一戦だった。最近6試合で見れば、近本21打数3安打、打率1割4分2厘、中野24打数2安打、8分3厘と打撃不振が目立っていた。
打撃オーダーは1番から順に打つと、より得点できるように組む。必ず1番から始まる初回がまず狙いである。ところが阪神は前日まで5試合続けて初回3者凡退が続いていた。野口恭佑、植田海、渡辺諒の1~3番で臨んだこの日も同様で6試合連続となった。
さらに初回の得点は6月16日のソフトバンク戦までさかのぼる。1カ月以上無得点で、22試合連続となった。
ただ、主力を外したカンフル効果はあったとみたい。代打で出た近本は初球から打ちに出て右前打を放った。3番・二塁で出た渡辺は一時勝ち越しの適時打を放った。途中出場の中野、熊谷敬宥に好守備があった。
控え選手は巡ってきた出場機会を生かそうと必死だった。レギュラー陣は奮起した。互いに刺激しあう相乗効果が出ていた。胸突き八丁の球宴前、いま一度、奮起する時である。 =敬称略= (編集委員)
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